恋愛の赤信号はSNSに出る?「投稿内容」より怖い本当の見極めポイント

恋愛の赤信号はSNSに出る?「投稿内容」より怖い本当の見極めポイント

「SNSをやっている人は恋愛で危ないのか」。この問いは単純に見えて、実はかなり厄介だ。Sydney Morning Herald系の記事は、恋愛における“レッドフラッグ”としてSNSがどこまで判断材料になるのかを取り上げ、Dr Michelle Olaitheの見解として、オンライン上で特定の人格を演出することが不健全な関係につながり得る、という問題意識を示している。つまり論点は「SNSがあるかないか」ではなく、「そこにどんな自己像を作っているか」だ。


 


この問いが切実なのは、そもそも出会いの入口がデジタル空間に大きく移っているからだ。Pew Research Centerによれば、米国では成人の3割が出会い系サイトやアプリを使った経験があり、若年層ほどその比率は高い。さらにオーストラリアでは、2022~2023年に集められた全国代表データをもとにしたAustralian Study of Health and Relationshipsの予備的結果として、20~39歳の過半数が「直近のパートナーとオンラインで出会った」と報告されている。恋愛がデジタルに移行した社会では、SNSやアプリの振る舞いが人柄の一部として読まれるのは、むしろ自然な流れだ。


だからこそ、SNSは今や“履歴書”のような役割を持つ。何を投稿しているか、誰をフォローしているか、他人の投稿にどう反応しているか、炎上にどう向き合うか。そこには、趣味や交友関係だけでなく、自己顕示欲の強さ、承認への依存、異性との距離感、さらには怒り方やユーモアの質まで表れてしまう。恋愛初期に相手のSNSを確認する行為が珍しくなくなったのは、興味本位というより、リスク管理に近い。実際、オンラインで出会うことが当たり前になった時代では、SNSは安心材料にも不安材料にもなる。


では、人はSNSのどこに「赤信号」を感じるのか。SNS上の反応をたどると、意外にも「SNSを使っていること自体が悪い」という意見は主流ではない。むしろ多いのは、「使い方にその人の問題が出る」という見方だ。たとえばRedditでは、SNSをまったくやっていない相手について「嘘をついているのでは」「交際相手を隠したいのでは」「身元確認がしづらい」といった不信が語られる一方で、「SNSがないほうがむしろ安心」「オンライン承認に振り回されないのは好印象」という真逆の声も目立つ。つまり“ある・ない”の二択ではなく、それぞれに別の不安がある。


この分裂はとても象徴的だ。SNSが活発すぎる人には、「常に注目されたいのでは」「恋愛関係より外部評価を優先しそう」という警戒が向く。逆に、SNSがまったく見当たらない人には、「既婚者では」「別アカウントがあるのでは」「素性を隠しているのでは」という別種の疑念が生まれる。恋愛市場においてSNSは、あるだけで加点されるものでも、ないだけで減点されるものでもない。どちらであっても、その背後にある理由が問われるのだ。


特に嫌われやすいのは、「異性の見せ場」に過剰反応する使い方だろう。フォロー欄が露骨に偏っている、親密さを匂わせるコメントが多い、恋人がいるのに“市場に開かれた態度”を保ち続ける。こうした振る舞いは、単なるSNS癖ではなく、境界線の曖昧さとして受け取られやすい。SNSでは行動がログとして残るため、日常では見えにくい価値観が可視化される。恋愛において問題なのは、投稿の派手さそのものよりも、「他者をどう見ているか」「パートナーへの配慮があるか」が見えてしまう点だ。Redditでも、相手が魅力的な異性ばかりを追いかけていることに違和感を抱く声が見られる。


もう一つの赤信号は、“演出過多”だ。元記事の問題提起にも通じるが、SNSで作られた人格が実像から大きく離れているとき、人はそこに不誠実さを感じる。もちろん、誰もがオンラインで多少はよく見せようとする。だが、投稿のたびに自己ブランドを管理し、恋愛相手との出来事まで「見せるための素材」として扱う人は、現実の関係より観客の視線を優先しているように映る。相手を愛しているのではなく、恋愛している自分を発信したいだけではないか。そう思われた瞬間、SNSはコミュニケーション手段から警戒対象へ変わる。


現代の恋愛では、SNSそのものだけでなく、SNS由来の“恋愛観”もまたレッドフラッグになりやすい。WIREDが報じたように、TikTokでは#datingadviceや#relationshipadviceといったハッシュタグが巨大な再生数を持ち、若年層が恋愛助言をプラットフォーム上で大量消費している。だが、そこで広がる助言は、しばしば科学的裏付けよりも刺激の強さで拡散される。Arizona State UniversityのLiesel Sharabiは、訓練を受けていない“専門家”が事実と意見の境界を曖昧にしやすいと指摘しており、University of WaterlooのAparajita Bhandariも、注目を集める助言が当人の実際のニーズに合うとは限らないと述べている。


ここで怖いのは、SNSが単に相手の性格を映すだけでなく、ユーザー自身の恋愛基準まで変えてしまうことだ。短い動画で「これをしたら即アウト」「こう言う男は全員危険」といった断定的な言説を浴び続けると、人は複雑な関係を単純なチェックリストで裁きやすくなる。WIREDの記事では、Flirtiniの調査として、回答者の4人に1人がTikTokを恋愛情報の主な情報源としており、約半数がSNSに恋愛アドバイスを求めるとされる。さらに46%がTikTokアドバイスによって関係上の問題を経験し、23%は破局につながったと回答したという。数字の受け止めには慎重さが必要だが、少なくともSNSが恋愛の“判断装置”になっている現実は無視できない。


つまりSNSは、恋愛のレッドフラッグを見つける場所であると同時に、レッドフラッグを過剰生産する場所でもある。少し返信が遅い、異性フォロワーが多い、ストーリーを見たのに連絡がない。こうした事柄は本来、文脈次第で意味が変わるはずだ。だがSNS文化は、曖昧なものを即座に“脈あり”“地雷”“誠実”“遊び人”へ分類したがる。恋愛が不安産業になり、警戒心がコンテンツとして消費されると、相手を見る目は養われるどころか、むしろ硬直していく。


一方で、SNSを見て助かることも確かにある。オンライン・デーティングの利用が広がる中で、安全性は現実的な論点だ。SSRSの2024年調査では、出会い系サイトやアプリで知り合った相手と対面することについて、61%が「概ね安全」と考える一方、39%は「それほど安全でない、または全く安全でない」と答え、女性のほうが危険視する割合が高かった。相手のSNSやオンライン上の痕跡を確認したいという欲求は、単なる詮索ではなく、自衛として理解すべき面もある。何も情報がないことが不安につながるのは、そのためだ。


だから、「SNSは恋愛のレッドフラッグか」という問いに対する答えは、おそらくイエスでもノーでもない。正確には、「SNSの使い方は、その人の恋愛観と対人態度をかなり率直に映すので、判断材料にはなる」が近い。過剰な自己演出、他人への敬意の欠如、境界線の緩さ、常時接続の承認欲求、そしてSNSで拾った断定的な恋愛論への依存。これらはたしかに警戒すべきサインだ。しかし同時に、SNSをやっていないことを一律で怪しむのも、投稿が多いだけで即“地雷”認定するのも短絡的だ。大事なのは、そこに一貫性と説明可能性があるかどうかである。


恋愛で本当に見るべきなのは、SNSの有無より、その人が他者とどうつながろうとしているかだ。誰に見せるために発信しているのか。注目を集めることと、信頼を育てることのどちらを優先しているのか。異性との距離感をどう考えているのか。批判や摩擦が起きたとき、言葉に責任を持てるのか。SNSは、その人の本質を完全に語るものではない。だが、関係が深まる前の段階で、その人の輪郭を早回しで見せる装置ではある。だから私たちは、プロフィールより投稿を、言葉より振る舞いを、そして“何を載せているか”以上に“なぜそう使っているのか”を見ているのだ。


結局のところ、恋愛における最大のレッドフラッグはSNSではない。SNSによって可視化された、誠実さの欠如だ。そこに気づきやすくなったのが、今の時代というだけなのかもしれない。



出典URL

  1. Sydney Morning Herald系で配信された「Is social media the ultimate 'red flag' in dating?」の記事
    https://www.smh.com.au/lifestyle/is-social-media-the-ultimate-red-flag-in-dating-20260307-p5o8cz.html

  2. 同一内容の系列媒体ページ
    Brisbane Timesに掲載された同一見出しの記事。検索結果から、同じ論点の記事であることを確認。
    https://www.brisbanetimes.com.au/lifestyle/is-social-media-the-ultimate-red-flag-in-dating-20260307-p5o8cz.html

  3. オンライン・デーティング利用状況の基礎データ
    Pew Research Centerのオンライン・デーティング調査。米国での利用率、年代差、利用者体験などの確認に使用。
    https://www.pewresearch.org/short-reads/2023/02/02/key-findings-about-online-dating-in-the-u-s/

  4. オンライン・デーティングの2024年動向と安全認識
    SSRSによる2024年調査。利用率、安全性の認識、体験の良し悪しに関する数値確認に使用。
    https://ssrs.com/insights/the-public-and-online-dating-in-2024/

  5. オーストラリアでオンラインの出会いが一般化していることを示す報道
    The Guardianの記事。Australian Study of Health and Relationshipsの予備的結果として、20~39歳の過半数が直近のパートナーとオンラインで出会ったという内容の確認に使用。
    https://www.theguardian.com/lifeandstyle/2024/sep/20/andrew-and-josella-met-online-its-now-the-norm-for-more-than-half-of-young-australians

  6. SNS上の恋愛アドバイス文化とその影響
    WIREDの記事。TikTokで恋愛助言が大量に消費されていること、専門性の乏しい助言が拡散される問題、Flirtini調査の数字の確認に使用。
    https://www.wired.com/story/the-real-relationship-hustlers-of-tiktok/

  7. SNSがないことをどう受け止めるかという一般ユーザーの反応例
    Redditのdatingoverfortyスレッド。SNS不在を「相性のフィルター」とみる意見の確認に使用。
    https://www.reddit.com/r/datingoverforty/comments/1myoe90/is_no_social_media_presence_a_red_flag/

  8. SNSを使わない相手への疑念に関する一般ユーザーの反応例
    Redditのdating_adviceスレッド。SNSがないことを、既婚・身元隠し・充実度の低さと結びつける反応の確認に使用。
    https://www.reddit.com/r/dating_advice/comments/11nxzyl/can_having_no_social_media_presence_be_a_red_flag/

  9. SNSが少ないことをむしろ好意的に見る反応例
    Redditのdating_adviceスレッド。SNSをやらないことを“より安心”とみる反応の確認に使用。
    https://www.reddit.com/r/dating_advice/comments/1eike3d/is_it_generally_a_red_flag_for_women_if_a_man/

  10. 相手のSNS上での異性への反応を警戒する声の例
    RedditのAskMenRelationshipsスレッド。フォローや反応の仕方をレッドフラッグとして見る視点の確認に使用。
    https://www.reddit.com/r/AskMenRelationships/comments/1q6hkrf/dating_and_social_media_red_flags/