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体を折る、ほどく、また折る ― “最も単純な動物”の複雑な仕事

体を折る、ほどく、また折る ― “最も単純な動物”の複雑な仕事

2025年12月23日 12:24

「脳がない」「筋肉もない」「口も胃もない」――そんな生き物が、まるで折り紙みたいに自分の体を“折って”“広げて”立体形状を作る。スタンフォード大学のPrakash Labが、最も単純な動物の一つとされる平板動物(プラコゾア)Trichoplax adhaerens(以下、トリコプラックス)で、これまで自然界では報告されていなかったタイプの“組織の折りたたみ”を見つけた。Phys.org


1mm級の“平たい動物”が、立体に変形する意味

トリコプラックスは、二層の上皮とその間の層からなる、直径1mm前後の半透明の動物で、神経(ニューロン)も筋肉も持たない。にもかかわらず、藻類を“狩る”ように食べたり、外敵に対して毒で防御したりと、意外なふるまいを見せることで研究者の関心を集めてきた。バイオインタラクティブ


これまでトリコプラックスは「2Dでうごく平たい生物」として語られることが多かった。ところが今回の研究は、その“前提”をひっくり返す。トリコプラックスは状況次第で体を折り、3Dの形を取れる。しかも、その折り方が固定の一種類ではなく、**非定型(non-stereotyped)**に多様だという。Dryad


「繊毛=水を動かす毛」だけじゃなかった

ポイントは、細胞表面に生える繊毛(cilia)だ。繊毛というと、気道で粘液を運んだり、微小生物が水中を泳いだりする“流体のための器官”という印象が強い。だが研究チームは、トリコプラックスの繊毛が表面を“歩く”ように動き、組織の形を作ることを示した。Phys.org


実は「繊毛で泳ぐ」以外に「繊毛で表面を移動する(歩行/クロール)」という話自体は、生物学の文脈でも知られている。トリコプラックスが表面での“歩行”に繊毛を使うことに触れた概説もある。OUP Academic


ただし今回の新規性は、その歩行が単なる移動に留まらず、“上皮シートを折り、ほどく”形態変換の駆動源になっている点だ。Life Science Network


折り目は「計画」ではなく「環境と運動」から立ち上がる

胚発生の教科書で語られる上皮の折りたたみは、細胞の形変化や増殖、分子シグナルの段取りによって“定型の手順(経路)”を踏むイメージが強い。ところが、この研究では、トリコプラックスの折り/展開は、はっきりした「折り畳み→次にここ→…」のような一本道ではない。
研究チームは、繊毛と基質(床)との接着や、繊毛歩行が生む力学によって、折り状態と展開状態の“遷移”が、**環境(基質の形状)と動き(モチリティ)**の結果として立ち上がる、と整理する。Dryad


ここが「折り紙っぽい」と言われる所以でもある。折り紙は、紙そのものに“折れる”という制約があり、折り線と周辺条件(押さえ方、支え方)で形が決まる。生物の上皮シートも同様に、薄いシートとしての物理が効く。今回の研究は、その物理を神経なしで使いこなす例として鮮烈だ。Phys.org


4D顕微鏡と巨大データで「折り」と「ほどけ」を追跡

彼らは4D蛍光ライトシート顕微鏡などを用いて、折り状態の幾何(曲率)や展開過程の曲率変化、展開の所要時間分布などを定量化したという。さらに反復試験により“ほどけ”がどれだけ頑健か、スケーリング解析やトイモデル・シミュレーションで、集団的な繊毛活動がどうやって安定して展開を駆動できるかを示す。Dryad


公開データはDryadにまとまっており、総量は200GB超。上皮の曲率マップ、ガラス毛細管上での折り、基質なし条件、薬剤条件(例:LiCl)での展開など、条件ごとのデータが並ぶ。Dryad


“動画で見て驚く”現象を、幾何学と統計で地道に潰していくタイプの研究で、地味だが強い。


「最初期の動物」は、どうやって“形”を獲得したのか

研究者が大胆に踏み込むのは、進化の話だ。トリコプラックスのような初期分岐の動物で、神経系に頼らない形態変換の原理が見えるなら、「形づくり」は神経の発明より先に、物理と集団運動で成立していたのではないか――そんな仮説が浮かぶ。Phys.org


胚発生では、脳のしわや器官形成の接合など、上皮の折りたたみが“当たり前”に登場する。今回の発見は、その“当たり前”を、より原始的な場所から照らし返す。Phys.org


工学への跳ね返り:ソフトロボ、合成生物、そして「設計できる折り」

この系が面白いのは、発生学や進化だけでなく、設計の言葉に翻訳しやすい点だ。上皮シートを「薄いアクティブマター」と見なすと、繊毛の集団運動は、外部からの制御が少なくても“勝手に”形を作る。つまり、ソフトロボティクスや合成生物学にとっては、**「材料(シート)+微小駆動(繊毛)+環境」**の組み合わせで立体形状を作るヒントになる。Dryad


Prakash Labは以前にも、単細胞生物の形変化を“細胞折り紙”として紹介したり(別テーマ)、紙の折りによる顕微鏡Foldscopeを作ったりと、「折る=精密」という発想と相性がいい研究室として知られる。今回の“生き物の折り紙”は、その延長線上にあるようにも見える。スタンフォードニュース


SNS/ネットでの反応:拡散されやすい“3つの刺さりどころ”

今回のニュースは、内容が硬派な割に、ネットで回りやすい要素が最初から揃っている。

  1. 「脳がないのに、賢そう」問題
    “神経がない”と聞くと、人はつい「何もできない」と思いがちだ。でも実際には、物理と集団運動で“それっぽい”ことが起きる。ここに驚きがある。Phys.org

  2. ビジュアルが強い(折り紙×生物×動画)
    研究チームは、この能力を強調するために紙を使ったストップモーション動画でも紹介しているという。文章より先に“絵”で刺さる仕掛けだ。Phys.org

  3. 「繊毛」のイメージ更新
    繊毛=流体、という固定観念を壊し、「歩いて形を作る」という再解釈を提示する。専門外の人にも“新しい豆知識”として伝わる。OUP Academic


定量的にも、Phys.orgの該当記事は同サイトの一覧上で、公開直後の時点で反応カウンターが“二桁”ついており(コメント欄の数値とは別に表示)、最低限「見つかったら共有されるタイプのネタ」であることがうかがえる。Phys.org


まとめ:折り紙は比喩ではなく、原理かもしれない

この研究が投げかけるのは、「高度な形づくり=高度な司令塔(脳)」という思い込みへの反証だ。薄いシート、微小な繊毛、基質との接触――その組み合わせだけで、折りと展開のダイナミクスが立ち上がる。Dryad


最初期の動物が、どうやって“形”を手に入れたのか。私たちの体の発生で、なぜ折りがこれほど重要なのか。そして将来、折りを“設計”できるのか。
トリコプラックスの、静かで奇妙な折り紙は、その全部に通じる入口になりそうだ。Life Science Network


参考記事

シンプルな動物が折り紙のような精密さで自らを折りたたむ方法
出典: https://phys.org/news/2025-12-simple-animal-origami-precision.html

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