50年以上前なのに、なぜ今も新鮮?「ABC」「Imagine」ほか、色あせない洋楽3曲

50年以上前なのに、なぜ今も新鮮?「ABC」「Imagine」ほか、色あせない洋楽3曲

50年以上前なのに、なぜ今も新鮮?「ABC」「Imagine」ほか、色あせない洋楽3曲

「この曲、どこかで聴いたことがある」

そんな洋楽を最初から最後まで聴いてみると、思いのほか心が動くことがある。耳になじんだサビの前に意外な展開があったり、何気なく聴き流していた声の表情に気づいたり。曲名を知っていることと、その曲を味わうことは、案外違う。

米音楽メディアAmerican Songwriterは、半世紀以上を経ても新鮮に響く1970年代のポップソングとして、3曲を紹介している。

ジャクソン5の「ABC」、ジョン・レノンの「Imagine」、そしてダイアナ・ロスの「Ain’t No Mountain High Enough」だ。

発表年は1970年と1971年。2026年の今から見ると、いずれも55年以上前の作品になる。それでも、再生した瞬間に伝わってくるものは、音楽史の知識がなくても受け取れる。

3曲の聴きどころを比べると、長く聴かれるポップスには、ひとつの決まった形があるわけではないことが見えてくる。


ジャクソン5「ABC」――理屈より先に体が動く楽しさ

1970年発表の「ABC」は、ジャクソン5の勢いを象徴するナンバーだ。同名のセカンドアルバムに収録され、全米シングルチャートで1位を記録した。

 

この曲を聴き直してまず感じるのは、明るさの中にある密度の高さだ。

弾むリズムの上で、リードボーカルとコーラスが次々に応答する。歌が前に飛び出したかと思うと、別の声が受け止め、演奏がまた背中を押す。耳を向ける場所が絶えず変わるので、短いフレーズの反復にも退屈しない。

中心にいるのは、幼いマイケル・ジャクソンの歌声だ。しかし魅力は、声の若さだけではない。言葉の切り方やアクセント、勢いをつけて歌い出す瞬間に、リズムを動かす力がある。

曲の発想も親しみやすい。学び始めの文字や数と、恋愛の楽しさを結びつけることで、難しい説明を必要としない入口をつくっている。英語の歌詞をすべて理解できなくても、声の掛け合いや音の弾みから、曲の楽しさが届く。

日本で普段J-POPやダンスミュージックを聴いている人なら、まず「メインの歌以外の声」に注目してみてほしい。コーラスは背景にとどまらず、曲を一緒に進めている。

「ABC」の新鮮さは、最新の音色に似ていることよりも、次の瞬間が楽しみになる構成にある。聴き慣れたサビも、その前後のやり取りまで追うと、また違って聞こえるはずだ。


ジョン・レノン「Imagine」――静かな音楽ほど、問いが残る

「ABC」が体を動かす曲なら、1971年の「Imagine」は、いったん足を止めて聴きたくなる曲だ。

 

ピアノと歌が中心にあるため、弾き語りのような印象を持つ人もいるだろう。ただし、録音にはベース、ドラム、ストリングスも参加している。音が少ないというより、歌とピアノを前に出すように整えられている。

その控えめな響きと、曲が投げかける大きな問いの組み合わせが印象的だ。

人を隔てる境界や価値観を、いったん別の角度から考えてみる。争いや分断を当然の前提にせず、違う世界を思い描く。そんな内容を、激しい演奏ではなく、穏やかな旋律で差し出している。

ここには、日本のリスナーにも知っておきたい背景がある。ジョン・レノンの公式サイトは、この曲をジョンとオノ・ヨーコの共作として紹介し、ヨーコの著書『グレープフルーツ』から受けた影響を説明している。

「Imagine」は、ひとりのスターの内面だけから生まれた曲として聴くより、ふたりの表現や対話から生まれた作品として捉えると、輪郭が少し変わる。

また、この曲は必ずしも、誰もが同じ気持ちで受け取る歌ではない。理想に励まされる人もいれば、現実との隔たりを感じる人もいるだろう。

それでも、旋律が聴き手を迎え入れる力は強い。すぐに結論を出さず、考える時間をつくる。その余白が、長く聴かれてきた理由のひとつではないだろうか。


ダイアナ・ロス「Ain’t No Mountain High Enough」――同じ曲を、別のドラマに変える

3曲目は、ダイアナ・ロスが1970年に発表した「Ain’t No Mountain High Enough」だ。

 

この曲には、マーヴィン・ゲイとタミー・テレルによる1967年の先行ヒットがある。曲名を聞いて、まず軽快な男女デュエットを思い浮かべる人もいるかもしれない。

ダイアナ版の面白さは、その曲をまったく違う時間の流れで聴かせるところにある。

とりわけアルバム版では、語りかけるような歌唱や言葉の間、厚みを増していくコーラスが、大きな盛り上がりに向けて働く。すぐにすべてを見せず、聴き手の期待を少しずつ高めていく。

その魅力は、大きな声を出すことだけでは説明できない。声を抑える部分があるからこそ、後半の開放感が際立つ。ひとつの楽曲が、短い舞台作品のように展開していくのだ。

モータウンの公式系サイトによると、レーベル創業者のベリー・ゴーディは、シングル化にあたってサビを前に移すよう求めたが、制作を担ったアシュフォード&シンプソンは応じなかったという。その後、ラジオでの放送がヒットにつながった。

結果として、この曲はダイアナにとって初のソロ全米1位になった。

最も分かりやすい聴きどころを、どこで登場させるか。そこにも曲の個性が宿る。ダイアナ版を聴くなら、有名な部分だけで判断せず、その場所へたどり着くまでの流れを楽しみたい。


SNSではどう聴かれている?称賛だけではない名曲との付き合い方

これらの曲は、ネット上でも聴き手の好みや考えを語るきっかけになっている。

ここで紹介するのは、海外掲示板型SNSのRedditで確認できた過去の投稿だ。今回のAmerican Songwriterの記事に対する反応や、SNS全体の傾向を示すものではない。

 

2024年11月の「Imagine」とポール・マッカートニーの「Maybe I’m Amazed」を比べるスレッドでは、投稿者が「Imagine」の柔らかく穏やかな響きを好むと説明していた。一方、返信には「Maybe I’m Amazed」を選ぶ声も見られる。

有名な曲だから無条件に一番、というわけではない。それぞれの声や演奏のどこに引かれるかを、聴き手が自分の言葉で語っている。

2025年10月には、「Imagine」への批判的な受け止め方について話し合うスレッドもあった。投稿者は曲への否定的な意見を問題提起し、返信には著名人によるカバー動画を持ち出すものもあった。

ここから分かるのは、曲の評価が音源だけで決まるとは限らないことだ。誰が、どんな場面で歌うのか。その印象が、原曲の受け止め方に重なる場合もある。ただし、こうした投稿だけで「近年は不人気になった」と結論づけることはできない。

ダイアナ・ロスについては、1970年のヒット曲を比較する2024年のスレッドで、「Ain’t No Mountain High Enough」を彼女の最高の仕事ではないかと評価するコメントが確認できた。

称賛され、比較され、ときには異論も出る。名曲が生き続けるとは、評価が固定されることではなく、新しい聴き手が自分の感想を付け加え続けることなのかもしれない。


日本で聴き直すなら、「知っている曲」を少しだけ丁寧に

この3曲を楽しむために、1970年代の洋楽史を予習する必要はない。最初は、ひとつだけ聴くポイントを決めると入りやすい。

「ABC」では、マイケルの歌とコーラスの応答を追う。ひとりの声だけでは生まれない、グループならではの勢いが見えてくる。

「Imagine」では、ピアノの後ろで鳴っている音にも注意を向ける。静けさを支える演奏に気づくと、シンプルという印象に奥行きが加わる。

「Ain’t No Mountain High Enough」では、できればダイアナのアルバム版を通して聴く。その後にマーヴィン・ゲイとタミー・テレルの版を聴けば、同じ楽曲が編曲と歌唱によってどれほど変わるかを楽しめる。

当時を知る人には記憶と結びつく音楽でも、初めて聴く人には、まだ知らなかった音楽だ。発売年が古いことと、聴く体験が古いことは同じではない。

体が弾む「ABC」。静かに考えを促す「Imagine」。時間をかけて感情を高める「Ain’t No Mountain High Enough」。

次に再生するときは、知っているサビの少し手前から、耳を澄ませてみてほしい。


出典・参考資料

  1. American Songwriter:Em Casalenaによる、1970年代の3曲を紹介した記事。
    https://americansongwriter.com/3-pop-songs-from-the-1970s-that-still-sound-fresh-despite-being-50-years-old/

  2. UNIVERSAL MUSIC JAPAN:ジャクソン5『ABC』の公式紹介。1970年発表、表題曲の全米1位などを確認。
    https://www.universal-music.co.jp/jackson5/products/uicy-78883/UNIVERSAL MUSIC JAPAN

  3. John Lennon公式サイト:「Imagine」の共作者、オノ・ヨーコの著書からの影響、参加ミュージシャンを確認。
    https://www.johnlennon.com/music/singles/imagine/johnlennon.com

  4. Classic Motown:ダイアナ版「Ain’t No Mountain High Enough」の制作背景、サビの配置を巡るエピソード、初のソロ全米1位について。
    https://classic.motown.com/story/diana-climbs-every-mountain/Classic Motown

  5. Reddit:2024年11月の「Imagine」と「Maybe I’m Amazed」の比較投稿。「Imagine」の穏やかな響きに対する評価を参照。
    https://www.reddit.com/r/beatles/comments/1gi89wh/reddit.com

  6. Reddit:2025年10月の「Imagine」の受け止め方を巡る議論。投稿者の問題提起とカバーへの言及を参照。
    https://www.reddit.com/r/beatles/comments/1o6wt44/reddit.com

  7. Reddit:1970年のヒット曲を比較するスレッド。ダイアナ版を高く評価するコメントを参照。
    https://www.reddit.com/r/ToddintheShadow/comments/1d254mi/