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居住可能圏を塗り替える液体 — “水以外”で生きられるか?:イオン液体が開く宇宙の生態系

居住可能圏を塗り替える液体 — “水以外”で生きられるか?:イオン液体が開く宇宙の生態系

2025年08月13日 00:14

水は“基準”であって“絶対”ではないのか

「生命には液体の水が要る」——天文学の教科書に刻まれたこの前提に、MITの研究チームが大きな揺さぶりをかけた。彼らが示したのは、“水ではない液体”が、宇宙の岩石惑星で自然に生まれ、長くとどまりうるという可能性である。鍵となるのは「イオン液体」。塩が100℃未満でも液体状態をとる物質群で、蒸気圧が非常に低く、容易に蒸発しない特性をもつ。MIT News


きっかけは金星雲:偶然の残った“一滴”

物語は金星探査準備の実験室で始まった。研究チームは、金星の雲の主成分である硫酸を蒸発させて採取物を分析する手順を試していたが、含窒素有機物(例:グリシン)と混ぜたサンプルでは、硫酸がほぼ飛んだ後にも、なぜか頑固に“液体の層”が残った。調べると、硫酸から水素が有機物へ移り、塩の混合液=イオン液体が生成していたのだ。偶然の観察が、「水が無理な環境でも液体は作れるのでは?」という仮説を生んだ。MIT News


実験が描く“岩石惑星の化学”

チームは30種類超の含窒素有機物と硫酸を多様な温度・圧力で組み合わせ、さらに玄武岩上にもしみこませて検証した。その結果、180℃という高温や、地球よりはるかに低い圧力でもイオン液体が形成されること、岩石の細孔に酸が吸い込まれても表面に液滴が残りえることが確認された。つまり、火山ガス由来の硫酸と、隕石などに普遍的な有機物が出会う場面があれば、液体の“点在オアシス”ができる計算だ。Phys.org


居住可能圏を拡張する“別の溶媒”

イオン液体の強みは「蒸発しにくさ」と「広い安定領域」にある。水は高温・低圧に弱いが、イオン液体はそうした条件でも液体を保ちやすい。さらに一部のタンパク質など生体分子がイオン液体中で安定に存在できることも示唆されており、極端環境での代謝の“舞台装置”になりうる。ハビタビリティの定義を「代謝が起こりうる液相の有無」と広げれば、岩石惑星の“居住可能”な領域は理論上大きく増えることになる。MIT News


文脈:水以外の溶媒を探る潮流

「水以外の溶媒」を生命の候補に挙げる議論は新しいものではない。たとえばメタン・エタンの海をもつタイタン、あるいはアンモニア・超臨界二酸化炭素など、多彩な“液体の宇宙”が検討されてきた。近年はレビューや理論枠組みも整備され、「環境に応じた代替溶媒」を系統評価する動きが続く。今回の成果は、その流れの中で“岩石惑星の表面で自然発生的にできる塩の液体”という具体例を突きつけた点に価値がある。Liebert Publishing


金星から系外惑星へ:観測と探査の接点

金星の雲は硫酸の海だが、有機物は太陽系の小天体や惑星に広く分布している。火山性の硫酸が有機物堆積に触れれば、液体のパッチが生まれる。研究を率いたセイガー教授は金星大気探査(Morning Star Missions)にも関わっており、実験の動機もそこにある。今後の課題は、どの生体分子がイオン液体中で機能しうるかの精査、そして遠方惑星で“イオン液体の存在らしさ”を示す観測指標(スペクトル特徴など)の設計だ。MIT News


どう測る?観測サイドの現実感

観測面では、たとえば“液体そのもの”の直接検出は難しい。だが、火山性硫酸と有機物反応が進むなら、派生するイオン種や表面光学特性の変化が手がかりになる可能性がある。また、最近は超高温の岩石系スーパーアースでも大気の存在が示唆されるなど、地獄のような環境でも化学循環は起こりうる。こうしたケーススタディの積み重ねが、イオン液体仮説の検証場となるだろう。Reuters


SNSの反応:熱狂と慎重論の“二相混合”

 


ニュース公開直後、Phys.orgやMIT Newsの投稿を起点にX(旧Twitter)やThreadsで拡散が進んだ。賛同派は「居住可能圏の再定義だ」「観測ターゲットの母集団が広がる」と歓迎。一方で慎重派は「イオン液体中の生化学はどこまで現実的?」「毒性・粘度・拡散の制約は?」と問いを投げかける。実際、Phys.org公式のX投稿には好意的な引用と同時に、検証のロードマップを問うスレッドが並んだ。Threadsでも「高温・低圧で液体が残るなら、乾いた惑星の表面進化モデルを見直すべき」とのコメントが見られる。X (formerly Twitter)スレッズ


専門家の視点と反論の芽

本研究がPNASに掲載された事実は、査読を通過したことを意味するが、あくまで実験と理論の“存在可能性”の提示である。批判的視点としては、(1)自然環境で反応物が1:1近傍の化学量論比で出会う頻度、(2)形成後の液滴が風化や放射線、粉じん堆積に耐えられる時間スケール、(3)高粘度環境での物質輸送と代謝拡散の実現性、などが挙げられる。これらは次の実験設計とモデル化の焦点になるだろう。MIT News


それでも“地図”は広がった

ハビタビリティの定義を「水が液体になれる領域」から、「何らかの液相が代謝を許す領域」へと拡張することは、観測戦略にも波及する。従来“水条件”で外された温暖・低圧の岩石惑星にも、探索の余地が生まれるからだ。研究チームは「パンドラの箱を開けた」と表現したが、それは無秩序のメタファーではない。むしろ、惑星表層化学と生命化学の接点を多様化する“研究課題の箱”が開いた、という意味である。Phys.org


参考記事

新しい研究によると、水がない惑星でも特定の液体を生成する可能性があることがわかりました。
出典: https://phys.org/news/2025-08-planets-liquids.html

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