“安すぎる施術”は危険のサイン ─ 美容医療“無法地帯”に終止符:英国がライセンス制で“ボトックス野放し”を一掃へ

“安すぎる施術”は危険のサイン ─ 美容医療“無法地帯”に終止符:英国がライセンス制で“ボトックス野放し”を一掃へ

はじめに

「美しくなりたい」――その欲望を逆手に取り、資格も衛生基準も無視して注射器を振るう“美容カウボーイ”が英国で猛威を振るってきた。政府は8月7日、ついに美容医療の“無法地帯”にメスを入れる包括的規制案を公表した。LBCThe Standard


背景:拡大する被害と医療費

液体BBLや安価なボトックス注射による深刻な合併症は、NHS(国営医療サービス)にも年間数千万ポンド規模の“修復コスト”を押しつけているという。昨年、グロスターシャー州のアリス・ウェブさん(33)が液体BBL後に死亡した事件は世論を揺さぶり、規制強化の決定打となった。The Standard


さらに今年6月から8月にかけ、未認可ボトックスによるボツリヌス症で41人が入院した事例が発生。医薬品規制庁(MHRA)は「偽造品や個人輸入製剤が横行している」と警鐘を鳴らした。The Sun

政府の新方針:3つの柱

  1. ライセンス制の導入

    • フィラーやボトックスなど低〜中リスク施術は、地方自治体が発行するライセンス取得を義務化。

  2. 高リスク施術の医療従事者限定

    • 液体BBLや脂肪注入などは、有資格の医療従事者がCQC登録施設でのみ施術可能。違反すれば制裁金や業務停止。LBC

  3. 未成年保護

    • 18歳未満への高リスク美容施術を原則禁止し、医療上の必要性がある場合のみ例外的に許可。ガーディアン

政府は2026年施行を目指し、来年早々に詳細を定めるパブリックコンサルテーションを行う予定だ。ガーディアン

専門家・業界の声

王立外科医師会のティム・ミッチェル会長は「一歩前進だが、手術系美容も同様に認定外科医限定とすべき」と評価と課題を併記。美容業界を代表するBritish Beauty Councilのミリー・ケンダルCEOは「恐怖体験が常態化した業界に信頼を取り戻す契機」と歓迎する。Save Faceのアシュトン・コリンズ氏も、制限が被害抑止に寄与すると期待を示した。LBC

SNSの反応:歓迎から懸念まで

 


  • 「遅すぎるがやっと来た」――BBC Breakfastの投稿には4,000件超のいいねが付き、肯定的な声が優勢。X (formerly Twitter)

  • 「値上がり必至で庶民には無理」――RedditのUK板では“美容弱者”を自認するユーザーが料金高騰を危惧するスレッドが伸びた。Reddit

  • 「美容師が注射とか狂気」――Xではハッシュタグ #CosmeticCowboys が瞬時にトレンド入りし、非医療者の施術実態に驚く投稿が目立った。

一方、施術者側からは「ライセンス取得コストが中小クリニックを圧迫する」との懸念も噴出している。

今後の課題

規制の骨子は示されたが、地方自治体の監視能力不足や“闇クリニック”の摘発方法など実務面は不透明だ。また、スコットランドやウェールズでの法整備は遅れており、地域間ギャップを狙う“越境施術”が懸念される。消費者団体Which?は「取締機関の人員増強なくして規制は絵に描いた餅」と警告する。ガーディアン

結び

美容医療はテクノロジーとSNSの発達で「クリック一つで予約」が当たり前になった。その裏で広がった危険を、今回の規制はどこまで減らせるのか。安全と自由の境界線を巡る議論は、英国のみならず世界の美容業界に波及しつつある。利用者にとっても「資格・保険・施設」の3点チェックが“新しい常識”となる日が近いだろう。


参考記事

美容業界の取り締まりでボトックスクリニックにライセンスが必要に
出典: https://www.bbc.com/news/articles/czd03ejd28lo?at_medium=RSS&at_campaign=rss