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なぜ今、放牧が防災になるのか—スペイン発「馬×森林管理」の最前線 : 気候危機時代の低コスト防災

なぜ今、放牧が防災になるのか—スペイン発「馬×森林管理」の最前線 : 気候危機時代の低コスト防災

2025年09月20日 00:07

序章:火災大陸の「草食動物戦略」に異変

地中海性気候の夏は、ひとたび乾けば低木と草が火薬庫になる。これまで消防の現場で“生きた刈払機”として頼りにされてきたのは主にヤギと羊だった。しかし、ここにきて静かに主役交代の兆しがある。馬だ。最新の学術論文と大学発表、そして現場の事例が、馬の“食べ分け力”に注目している。 Phys.org


研究のコア:馬は「燃料」を順番に食べる

UAB(バルセロナ自治大学)とレリダ大学のチームは、三つの放牧シナリオで馬の食性を追跡した。

  • Boumort国立狩猟保護区のプシェワルスキー(半自由・低密度)

  • Garraf自然公園のポトカ(継続放牧・低密度)

  • 交雑馬の短期高密度・補助給餌(集中的管理)

新鮮糞50検体を顕微鏡で微細表皮片まで解析し、統計モデルで食性シフトを推定。その結果、**草(細い燃料)→低木(粗い燃料)**へと段階的に移る“柔軟な食性”が確認された。特にポトカや交雑馬は、草が減ればジュニパーやピスタチアなど木本にも積極的に手を伸ばす。つまり、火の“点きやすさ”の高い細燃料から、延焼を助ける粗燃料まで、季節と密度に応じて下草・低木を食べ分けるのである。 Phys.org


この知見は、従来「草しか食べず木には影響が小さい」とされてきた馬像を更新する。論文はAgroforestry Systemsに掲載され、長期効果の定量化が今後の課題としつつも、**“馬はヤギ・羊を補完する林内マネジメント要員になり得る”**と結論付ける。 SpringerLink


モザイク景観と「燃えにくさ」

地中海林で大規模火災が広がる背景には、放牧と薪採取の衰退で一様な燃える緑が広がったことがある。馬が通い、草地・低木・林縁が入り組むモザイク景観が維持されると、火は駆け抜けにくい。Boumortの事例では、草中心の食性が**“天然の草原清掃”**として効き、低木は同所のシカ類など他の大型草食動物が担当する“役割分担”も観察されたという。多種放牧=マルチスピーシーズ・グレージングが鍵だ。 ScienceBlog.com


現場の温度感:再野生化と地域経済

研究の外側でも、スペイン各地でプシェワルスキーの再導入や半野生化プロジェクトが進む。目的は生態系回復と火災リスク低減、そして観光・雇用創出まで含む地域再生だ。たとえば、カスティーリャ=ラ・マンチャやイベリア高地では“馬が来てから火事が減った”という現地の声を報じる記事やフォトストーリーが相次ぐ。 news.mongabay.com


一方、Garraf自然公園では、ミランダ財団が“フリーホース”の見学会を続け、馬が生物多様性と防火に与える意義を伝える。ここでは、里山の“社会インフラ”としての放牧が観光と教育の装置になっている。 Fundació Miranda


SNSの反応:推し馬、推し防災

 


X(旧Twitter)では、保全系アカウントが**「プシェワルスキーが火災に強い景観を取り戻す」と紹介し、欧州の再野生化ムーブメントの象徴として拡散。Facebookでも、「馬が“最も乾いた植生”まで食べ進むのは良いことだ」**という草の根の声がシェアされる。賛同の一方、「放牧圧の調整や獣医管理は?」といった現実的な問いも寄せられる。SNSの空気感は、期待7:懸念3といったところだ。 X (formerly Twitter)


研究以外の補助線:ポルトガルとガリシアの事例

スペインに隣接するポルトガルでも、半野生馬の導入で火災リスクが下がったとする3年研究が報じられている。ガリシアでは**「2019年の導入以降、大火は起きていない」**と住民の証言。科学論文の積み上げと、地域の手応えが互いを補強し始めた。 The Portugal News


それでも必要な“鉛筆なめ”:限界と留意点

  • 時空間スケール:短期・局所での燃料削減が、大規模火災の確率低下にどれほど寄与するかは長期モニタリングが要る(研究側も明言)。 Phys.org

  • 放牧圧の最適化:密度が低すぎれば効果が薄く、高すぎれば裸地化や侵食を招く。管理設計の要。 Phys.org

  • 多種連携:馬単独より、ヤギ・牛・シカなどとの役割分担が有効。 ScienceBlog.com

  • 社会実装:獣医ケア、搬送、柵や給水、補助給餌、補償といった運用コストをどう賄うか。

  • 地域合意:ハイカーや自転車との接触、植生保全目標との整合、捕食者(オオカミ等)との関係など、合意形成が不可欠。


実装ロードマップ(ドラフト)

  1. リスク地図×燃料マップを統合:可燃物の連続性、勾配、風向、“飛び火回廊”をGISで可視化。

  2. 放牧設計:季節×密度(例:0.2頭/ha/年:継続、2.5頭/ha:短期集中的)で区画ごとに細燃料→粗燃料の順で削減。 Phys.org

  3. マルチスピーシーズ編成:ヤギで低木を深掘り、馬で草原を面管理、必要に応じ牛で更新。

  4. 効果検証:糞の顕微組成×LIDAR×熱赤外ドローンで燃料量・連結度を定量。論文と同様の食性指標を導入。 SpringerLink

  5. 地域ブランド化:見学プログラム・牧道トレイル・ローカルプロダクトで経済循環を創出。 Fundació Miranda


結語:燃える前に“食べる”という防災

重機も化学薬剤も要らない、低炭素で美しく、しかも観光と教育を呼び込む防災。馬はその中心に立てるのか。答えは“条件付きでYES”。放牧設計、複数種の組み合わせ、長期評価、地域の合意、これらが噛み合うなら、馬は**「燃える前に食べる」**最前線のパートナーになるだろう。 Phys.org



参考記事

馬の食事適応能力が森林火災予防の鍵となる可能性
出典: https://phys.org/news/2025-09-horses-dietary-key-forest.html

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