メインコンテンツにスキップ
ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア ロゴ
  • 記事一覧
  • 🗒️ 新規登録
  • 🔑 ログイン
    • English
    • 中文
    • Español
    • Français
    • 한국어
    • Deutsch
    • ภาษาไทย
    • हिंदी
クッキーの使用について

当サイトでは、サービスの向上とユーザー体験の最適化のためにクッキーを使用しています。 プライバシーポリシー および クッキーポリシー をご確認ください。

クッキー設定

クッキーの使用について詳細な設定を行うことができます。

必須クッキー

サイトの基本機能に必要なクッキーです。これらは無効にできません。

分析クッキー

サイトの使用状況を分析し、サービス向上に役立てるためのクッキーです。

マーケティングクッキー

パーソナライズされた広告を表示するためのクッキーです。

機能クッキー

ユーザー設定や言語選択などの機能を提供するクッキーです。

猛暑が英国経済に及ぼす驚きの影響—気候変動がもたらす新たな試練

猛暑が英国経済に及ぼす驚きの影響—気候変動がもたらす新たな試練

2025年09月30日 00:18

2025年の英国の夏は観測史上もっとも暑かった。平均気温は平年比+1.51℃、1884年以降の記録を更新し、同規模の夏が「自然気候」では約340年に1度なのに対し、現在の気候では約5年に1度の頻度に高まっているという分析も出ている。熱の常態化は、単なる体感の問題ではない。生産性、消費、インフラ、住宅、健康、そして格差の形で“経済”を直撃する。Met Office


――この背景を踏まえ、Manchester Metropolitan Universityなどの研究チームは、英国の地方自治体レベルの経済データと季節別の気温を突き合わせ、「夏の平均気温が1℃上がると、英国の経済成長率は約2.4%押し下げられる」と推計した。1℃で−2.4%——この数字は、温暖な日が消費を一時的に押し上げる“ポジティブ”よりも、全体のマイナスが勝ることを端的に示す。Phys.org


以下では、2025年夏に実際に観測されたデータや現場の事例、そしてSNSの反応も織り込みながら、暑い夏が英国経済にもたらす具体的な衝撃を整理する。



① 労働と生産性:職場は“暑さ対応”の臨界点へ

高温は労働者の集中力・判断力・体力をそぎ、オフィスでも工場でも現場でも、労働生産性の低下を招く。英国の労組はこの夏、**屋内の最高気温を法で上限設定(一般30℃、重作業27℃)**するよう強く要求。検査では屋内の6割近くで27℃超が報告され、熱ストレス症状(頭痛・めまい・疲労)が相次いだ。柔軟勤務、換気・遮熱、服装規定の緩和など、即効性のある対策の導入を促している。公共および商業サービス労働組合


② 消費と小売:一時の“猛暑特需”と全体の陰り

“暑さ”は扇風機や夏物、飲料などの販売を押し上げる。実際、2025年6月の小売売上は前年比+3.1%、8月も+3.1%となり、夏場は一定の追い風になった。だが、これは物価上昇や季節要因も絡む一過性の追い風で、家計や信頼感の鈍さは依然根強い。季節の追い風が去れば、消費の腰折れリスクが残る。brc.org.uk brc.org.uk


③ 農業:収量の急落、収穫の前倒し、コスト高

記録的な暑さと春の乾燥の組み合わせで、穀物やジャガイモの損失が地域によっては最大50%に。牧草は最大80%減の報告もあり、収穫は2〜3週間前倒しとなった地域が出た。飼料の手当や灌漑の制約、熱ストレス対策など、農家は多面的なコスト増に直面している。Farmers Weekly


④ 交通インフラ:線路は膨張し、速度規制が常態化

鉄道は高温でレールが膨張・座屈しやすくなる。速度規制や運休が安全確保のために必要となり、旅客・物流の遅延が連鎖する。送電や架線のたるみ対策、白色塗装、センサーによる温度監視など、各社は耐熱化を急ぐが、熱波の頻度上昇に追いつくには投資の恒常化が不可避だ。Network Rail


⑤ 住まいと都市:オーバーヒートは“新たな住宅不良”

英国の住宅は“暖を逃さない”設計思想が強く、夏は裏目に出る。現状でもイングランドの約5分の1の住宅が夏季に過熱し、**将来“高リスク”は36%**に跳ね上がるとの推計がある。都市部、とりわけロンドンはリスクが高く、ロンドンの寝室では32%、リビングで28%が過熱、他地域の17%・13%を大きく上回る傾向が報告される。低所得層や子育て世帯、賃貸世帯の脆弱性も際立つ。resolutionfoundation.org


**住宅の暑熱対策は“断熱=万能”ではない。**日射遮蔽・通風・外付けブラインド・庇・反射塗装・緑化などの“パッシブ対策”の組み合わせが要。エアコン普及は即効性があるが、電力ピーク・都市ヒート・光熱費の増加という副作用を伴う(住宅改修は冬・夏の両立で最適化が必要)。resolutionfoundation.org


⑥ 地域と産業の偏在:南部・都市・高齢労働者への集中

暑さの影響は一様ではない。金融・サービスの集積する南イングランドや農業地帯は直撃を受けやすく、屋外・重作業中心の産業、50歳以上の労働者ほどリスクが重くのしかかる。事務職でも、空調の有無やビルの性能・立地次第でパフォーマンスは大きく揺らぐ。resolutionfoundation.org


⑦ 「1℃で−2.4%」の中身:何が成長を削るのか

研究チームは、自治体スケールの成長データと季節ごとの平均気温を統合する空間計量モデルを採用した。メカニズムは幅広い——(1) 労働供給・生産性の低下、(2) 医療費・労災・欠勤の増加、(3) 農業収量・品質の悪化、(4) 交通・物流の遅延、(5) 住環境の劣化による睡眠不足・健康被害、(6) 暑熱適応投資(冷房・改修・遮熱)の増加による可処分所得と企業投資の圧迫。短期の“猛暑特需”は、これらの恒常的・広範なマイナスに飲み込まれる。Phys.org


⑧ SNSの反応:現場感と危機感、そして分断

 


  • 小売業界は「今年の夏は売上が持ち直した」とポスト。BRCは8月+3.1%を強調しつつ、秋予算前の不確実性に警戒感をにじませた。X (formerly Twitter)

  • 労働界は「法的な最高職場気温」を求める投稿や声明を連発。TUCの“温度ウィーク”に連動した呼びかけが目立つ。公共および商業サービス労働組合

  • 政策シンクタンク/団体は「1℃で−2.4%」の研究を紹介しながら、都市計画・住宅改修・作業慣行の見直しを促す声。X (formerly Twitter)

  • 研究者コミュニティはLinkedIn等で論文公表を告知、メソッドや含意を議論。LinkedIn

総じて、“適応のスピードが追いついていない”という危機感が広がる一方、冷房導入や勤務時間のシフト、在宅勤務の拡充など現実的な適応策を巡る議論は前向きに進む——が、そのコスト負担と公平性をめぐって意見は割れている。


⑨ 企業・自治体が今すぐやれる対策チェックリスト

職場

  • 上限温度の社内基準(警戒=24℃/抑制措置、上限=27–30℃)と“暑熱カレンダー”運用

  • 時差勤務・作業強度の再配分、休憩増、制服の軽装化

  • 局所冷房・遮熱ブラインド・外付け日射遮蔽・高反射塗装の優先導入

  • 熱リスク職の年齢配慮(50歳+)と健康サーベイの定常化 公共および商業サービス労働組合


住宅・都市

  • 南面の外付け遮蔽/熱反射塗料/庇・雨戸/夜間通風の“パッシブ四点セット”

  • 緑陰のネットワーク(街路樹・クールルーフ・透水性舗装)の面的整備

  • 既存ストックの改修時は冬暖・夏涼の両立(高断熱×日射遮蔽×機械換気)

  • 脆弱地域の優先改修(賃貸・小規模住宅・集合住宅・都市ヒートアイランド縁辺) resolutionfoundation.org


インフラ

  • 線路・架線の耐熱化投資(白色塗装、センサー、オートテンション化)

  • 高温時の運転計画(速度規制/予防保全)を“想定内”運用へ Network Rail


⑩ 結論:“涼しさ”は生産要素だ。

2025年夏の英国は、**「暑さは経済の敵」であることをデータで突き付けた。気候変動が進むほど、快適な作業環境・住環境を確保すること自体が、成長の前提条件になる。エアコンの直球だけでは持続しない。パッシブな設計とアクティブな運用の合わせ技、脆弱層への優先投資、そして職場ルールの更新が、−2.4%/℃**の坂を緩やかにする近道だ。Phys.org


参考記事

なぜ暑い夏が英国経済に悪影響を及ぼすのか
出典: https://phys.org/news/2025-09-hotter-summers-bad-uk-economy.html

Powered by Froala Editor

← 記事一覧に戻る

お問い合わせ |  利用規約 |  プライバシーポリシー |  クッキーポリシー |  クッキー設定

© Copyright ukiyo journal - 日本と世界をつなぐ新しいニュースメディア All rights reserved.