水のベッド?溶岩のベッド? “寝るならどれ”  : TikTokで話題の奇妙なベッドトレンド

水のベッド?溶岩のベッド? “寝るならどれ” : TikTokで話題の奇妙なベッドトレンド

1. 最近TikTokで増殖している「AIベッド」って何?

ここ最近、TikTokのおすすめ欄に、やたらと“寝室”が流れてくる。しかも普通の寝室じゃない。ベッドのマットレスも枕も掛け布団も、全部が水でできていたり、鏡みたいに光る金属だったり、さらさら崩れる砂だったり、赤く脈打つ溶岩だったりする。


動画はだいたい同じ流れだ。画面に複数のベッドが提示され、最後に問いかけが来る。

「寝るならどれ?」
「1〜4、選んで」
「コメントで教えて」


“AIベッド”という呼び名がぴったりなのは、これらが人間の撮影ではなく、生成AI(画像・動画生成)で作られた映像として広がっているからだ。ニュース集約の要約でも「AIベッド動画が何百本も出回り、視聴者にどれを選ぶか尋ねている」と説明されている。


ポイントは「奇妙さ」そのものではない。奇妙さは入口で、主役は“選ばせ方”だ。



2. なぜこんなにアルゴリズムに刺さるのか:仕掛けは“参加”の設計

この手の動画が強い理由は単純で、視聴者が受け身で終わりにくいからだ。

  • 目が止まる:素材の違和感(ベッドが水、金、砂、火)

  • 脳が勝手に補完する:「寝心地どうなる?」「冷たそう」「危ない」

  • 最後に参加を迫られる:「どれにする?」


この「問い」が、TikTokにとって最強の燃料になる。コメントが増えるからだ。
実際、同トレンド解説では“視聴者が選びたくなる”設計が、ショート動画で高いエンゲージメントを生む、と分析されている。


しかも、選択肢が4つあるのが絶妙だ。


2択は好みが割れても話が終わる。3択は迷いが減る。4択は「どれも嫌/どれも良い」を含めて、コメントの言い訳が作りやすい。

  • 「1は楽しそうだけど、現実なら窒息しそう」

  • 「3が無難。でも2の金ピカも捨てがたい」

  • 「全部無理、普通の布団が勝つ」

つまり動画は「映像作品」ではなく、コメント欄を発火させる装置として設計されている。



3. AI生成で“量産”できることが、トレンドを加速させた

もうひとつ大きいのは、制作のハードルが下がったこと。
同トレンドの作り方を解説する記事では、プロンプト(指示文)と生成ツールを使って、複数パターンの“素材ベッド”を作り分け、短尺向けに書き出す流れが説明されている。


ここで起きているのは、動画の「テンプレ化」だ。

  • 画角:ベッド中心、やや引きの画

  • 演出:質感が伝わる動き(波紋、反射、崩れ、泡立ち)

  • 構成:1→2→3→4→問いかけ


テンプレがあると、作り手は“ネタ差し替え”だけで増産できる。
水の次はゼリー、次はガラス、次は雲、次は毛虫……と、素材だけ無限に変えられる。


結果として、視聴者側はこう感じ始める。

「またこれ?」
「でも見ちゃう」
「気づいたらコメントしてる」


そして、コメントした瞬間に“あなた向けの無限供給”が始まる。



4. SNSの反応:盛り上がりは「好み」だけじゃない

 

SNS上で見える反応は、大きく4種類に分かれる。


① 参加型(選ぶ派)

「1が一番落ち着く」「3が高級ホテルっぽい」みたいに、普通に投票する層。
Redditでも、同型の投稿に対して「1」「3」など“番号だけ”で選ぶコメントが並び、直感投票が起きている。


② つっこみ型(現実性で笑う派)

「溶岩は寝る前に人生終わる」「水ベッドは呼吸できない」みたいに、現実の物理でツッコむ層。
“変なものを真面目に検証する遊び”がコメント欄で回りやすい。


③ 反転アンチ(うんざり派)

「おすすめがこればっか」「同じ構成で飽きた」
バズの副作用として、供給過多への疲れが出る。
ただし“うんざりコメント”もまたエンゲージメントなので、皮肉にも拡散燃料になる。


④ メタ視点(AI時代っぽさに震える派)

「もう人間が撮らなくてもバズれる」
「みんな同じプロンプトで世界が均一化していく」

ショート動画がAIテンプレに飲み込まれていく怖さを語る層だ。
Instagramでも類似の“Which bed are you sleeping in?”投稿が見られ、プラットフォーム横断でフォーマットが増殖していることがうかがえる。



5. “奇妙なのに見ちゃう”の正体:快感は「選択」から生まれる

このトレンドのいちばんズルい点は、視聴者に「自分の好み」を言語化させるところにある。

「2は冷たそうだから嫌」
「1は音が気持ちよさそう」
「3は掃除が大変そう」


人は、好みを説明し始めた瞬間に、その対象に関与してしまう。
関与した動画は“自分の体験”になり、もう一度見ても退屈しにくい。
結果、再視聴や保存が起き、アルゴリズム的にも強くなる。


つまり“AIベッド”は、寝具の話ではなく、選択のゲームだ。



6. これからどうなる?:次の波は「ベッド以外」へ

テンプレの本質が「選択式の没入映像」だとすると、題材はベッドに限られない。

  • 「このエレベーター、どれに乗る?」

  • 「この家、どれに住む?」

  • 「このスープ、どれを飲む?」

  • 「この惑星、どこに降りる?」


すでに“部屋・家・食べ物・乗り物”で同型フォーマットは成立しやすい。
作り手は問いを変え、視聴者は反射で答え、アルゴリズムが増幅する。


このループが続く限り、私たちはしばらく「選ばされる動画」から逃げられない。



7. それでも、このトレンドが示しているもの

“AIベッド”が示しているのは、「すごい映像」ではなく、「すごい回路」だ。

  • 見た目の違和感でスクロールを止める

  • 選択肢で脳内シミュレーションを走らせる

  • コメントという行動を引き出す

  • 行動が次の供給を呼ぶ

そして、生成AIで供給側が無限化した。


もし最近おすすめ欄が“変な寝室”だらけなら、それはあなたの感性が変わったからじゃない。
あなたが一度、選んだからだ。



出典URL

  1. Sydney Morning Herald :今回の“AIベッドがTikTokのアルゴリズムを席巻”という主題の出典
    https://www.smh.com.au/lifestyle/bizarre-ai-bed-trend-taking-over-tiktoks-algorithm-20260218-p5o3an.html

  2. Ground News の要約ページ:記事内容の骨子(AIベッド動画が多数出回り、視聴者に選択を促す)を確認した出典
    https://ground.news/article/bizarre-ai-bed-trend-taking-over-tiktoks-algorithm

  3. トレンド解説(作り方・拡散の構造の説明):同フォーマットが“なぜ伸びるか/どう量産されるか”の参考
    https://focalml.com/blog/which-bed-are-you-sleeping-in-how-to-create-viral-ai-bed-choice-videos/

  4. Reddit投稿(反応例):番号で選ぶ・好みを語る、といった参加型リアクションの参考
    https://www.reddit.com/r/dalle2/comments/1ayj3qs/which_bed_are_you_sleeping_in_123_or_4/

  5. Instagram投稿(反応例):同型の問いかけフォーマットがTikTok以外にも波及している例
    https://www.instagram.com/reel/DNi8576PbiU/