排便データを“座るだけ”で取得――TOTO新型『ネオレスト LS-W／AS-W』が切り拓く“便スキャン”ヘルスケア革命

2025年07月17日 16:33

1. 背景――“腸活”市場が求める次世代データ

日本政府が掲げる健康寿命3歳延伸目標（2025∼2035年）や、腸内フローラ研究の進展を受けて、ヨーグルト・プロバイオティクス・パーソナルサプリ市場は前年比12％成長を続けている。一方、便の客観データは「面倒」「記録が続かない」という課題があり、定量情報をライフログ化できる製品はほぼ皆無だった。

TOTOの社内調査では**76％**が「便を目視で確認する」と回答したものの、アプリ記録まで行う人は6％に留まっていた。 TOTO株式会社

こうしたギャップを埋めるソリューションとして、トイレメーカー最大手が選んだのが“無意識”データ収集である。

2. 製品概要――ネオレスト LS-W／AS-W

項目	LS-W	AS-W
便スキャン機能	○（標準）	○（標準）
本体価格（税込）	542,300円～	493,900円～
ボウル形状	継ぎ目なし・有機曲線	直線基調・スクエア
洗浄方式	トルネード洗浄（3.8L）	同左
脱臭／除菌	プラズマイオン方式	同左
アプリ連携	Bluetooth 5.0／Wi-Fi	同左
（出典：TOTOニュースリリース） TOTO株式会社

2-1. センサー構造

近赤外線LED＋受光素子で便表面を高速スキャン
機械学習アルゴリズムがブリストルスケール7段階・色情報・体積を0.1秒以内に推定
測定誤差：硬さ±0.3段階、色ΔE*ab±3、体積±5 mL（TOTO社内検証値）

2-2. アプリ「TOTO ウェルネス」

直近30日の便コンディションをチャート化
食事・睡眠・運動ログを統合し、“腸年齢”スコアを算出
CSVエクスポート機能で医療機関への共有が容易

3. 技術詳細――便スキャンAIの学習データ

TOTOは医療機関7施設と共同で、3万2,000件以上の匿名化便画像を収集。色補正後、硬さタグを付与し、Res-Net派生のCNNで学習させた。色推定にはLab色空間を採用し、照明条件差異を独自アルゴリズムで補正。体積推定は深度センサーの点群解析（Poisson Surface Reconstruction）を応用し、平均5 cm³の誤差に抑えた。

4. 生活者メリット――“見える化”が行動変容を促進

便秘リスク低減：硬さスコアが5以上で警告を表示し、水分摂取リマインダーを送信
早期疾患発見：黒色便・タール便を検知すると「消化管出血の可能性」を注意喚起
家族管理：最大4ユーザーの個人設定に対応し、プライバシーを保ちつつ家族の腸内健康を見守る

名古屋市立大学の検証実験（n=120）では、便スキャン導入群が4週間で食物繊維摂取量＋18％、水分摂取量＋11％を達成し、排便頻度も週平均1.8回増加したと報告されている。

5. 市場インパクトと課題

5-1. グローバル競合

米国スタンフォード大学が2020年に発表した“precision-health toilet”プロトタイプや、イスラエル OutSense 社の便センサーは臨床用途中心で高額だが、TOTOは50万円台に抑え一般家庭へ訴求する点が差別化ポイントだ。 Stanford Medicineガーディアン

5-2. プライバシー保護

便データは“究極の個人情報”とも呼ばれる。TOTOはエッジ処理で画像データを即時破棄し、数値化データのみ暗号化してクラウドに送信する設計を採用。国際標準ISO/IEC 27701と日本のプライバシーマークの二重取得を計画している。

6. 今後の展望――“水まわりヘルステック”エコシステム

浴室連携：シャワー湯量と心拍計測で脱水リスクを解析
洗面台カメラ：顔色・眼球充血をAI判定し、腸内状態と相関分析
医療DX：TOTO ウェルネスAPIを介し、オンライン診療プラットフォームへリアルタイム連携

2027年には北米・欧州市場投入を視野に、FDA・CE取得を目指すとしており、世界のスマートトイレ市場規模は2030年に245億ドルへ達する見込みだ。

7. まとめ

「ネオレスト LS-W／AS-W」は、トイレという日常空間を“センシング拠点”に変えることで、腸内環境データの取得ハードルをゼロに近づけた。便スキャンが普及すれば、“快便＝健康”という曖昧な概念が数値化され、生活習慣病の予防・早期治療が加速するだろう。

TOTOの挑戦は、国内ヘルステック産業に留まらず、世界の公衆衛生向上にも波及する可能性を秘めている。

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