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浄水場の活性炭が“最終処分場”に? 薬品も高温もいらない — PFASを“すりつぶして”消す新技術の衝撃

浄水場の活性炭が“最終処分場”に? 薬品も高温もいらない — PFASを“すりつぶして”消す新技術の衝撃

2025年11月23日 22:03

“永遠の化学物質”をすりつぶせ——PFAS分解に新しい一手

「フォーエバー・ケミカル(永遠の化学物質)」と呼ばれるPFASを、常温・常圧で、しかも追加の薬品も熱も使わずに壊してしまう——。


そんな夢のような手法が、米クラークソン大学の研究チームから報告されました。ステンレス製のボールミルにPFASを吸着させた活性炭を入れて、ガラガラと回すだけ。シンプルすぎて疑いたくなるこの方法が、本当にPFASを“消して”しまうというのです。Phys.org



PFASとは何者か?「便利さ」と「しつこさ」の二面性

PFAS(ペルフルオロアルキル/ポリフルオロアルキル物質)は、耐熱性や撥水性、油はじき性能に優れた人工化学物質の総称で、その数は1万種類以上とも言われます。フライパンの焦げ付き防止コーティング、撥水加工のアウトドアウェア、耐油紙の食品包装、泡消火剤など、私たちの日常のそこかしこで使われてきました。CHEM Trust


しかしその一方で、PFASは自然界でほとんど分解されず、環境中や人間の体内にたまり続けることが明らかになっています。血液や母乳から検出される例も多く、免疫機能の低下、がんリスクの上昇、肝臓や腎臓へのダメージ、不妊などとの関連を指摘する研究が相次いでいます。欧州環境庁


欧州ではPFAS汚染が深刻な社会問題となっており、フランスは化粧品や繊維製品などを対象に包括的なPFAS禁止法を可決。消防用泡消火剤についてもEUレベルで段階的な使用制限が進んでいます。Reuters


日本を含む世界各地で、飲料水や土壌、野生動物から「過去最高レベル」のPFASが検出されたというニュースが絶えません。AP News



「吸着はできる、でもそのあとどうする?」活性炭処理のジレンマ

PFAS汚染対策として現在広く使われているのが、粒状活性炭(GAC)による吸着です。活性炭は無数の細孔をもち、PFASなどの有機汚染物質を表面にくっつけて除去することができます。実際、多くの浄水場や家庭用浄水器で、この仕組みが利用されています。環境保護庁


しかし大きな課題がひとつあります。「PFASでいっぱいになった使い終わりの活性炭をどう処理するか」です。

  • そのまま埋め立てれば、時間がたってPFASが染み出す可能性がある。

  • 高温焼却すれば分解は進むが、大量のエネルギーが必要で、分解が不完全なら別の有害物質が出るおそれもある。

  • 薬品を使った分解法では、薬剤コストや副生成物の処理が問題になる。


PFASを「捕まえる」技術は整いつつあるものの、「安全に始末する」解決策はまだ決定打に欠けていました。ここに今回の研究が切り込んできます。Phys.org



ボールミルでガラガラ…それだけでPFASが消える?

クラークソン大学の研究チームが着目したのは、材料を粉砕するのに使われるステンレス製ボールミルです。筒状の容器の中で、数センチ大の鋼球がゴロゴロと転がり、ぶつかり合いながら中身を細かく砕く装置で、鉱山や材料科学の分野ではおなじみの機械です。Phys.org


研究では、PFASを吸着させた粒状活性炭をこのボールミルに投入し、鋼球と一緒に回転させました。すると、ボール同士やボールと容器、活性炭が激しくこすれ合うことで「トライボエレクトロン」と呼ばれる電子が発生し、その電子が炭素とPFASの間で反応を引き起こします。結果として、PFAS分子の強固な炭素–フッ素結合が切断され、段階的に分解されていくというメカニズムが示されました。Phys.org


重要なのは、このプロセスが以下の条件で成立したことです。

  • 追加の薬品をまったく使わない(添加剤フリー)

  • 特別な加熱も溶媒も不要、室温で実施可能

  • 既に広く使われている粒状活性炭をそのまま原料として処理できる

実験では、長鎖型・短鎖型を含む複数種類のPFASに対してほぼ完全な分解が確認され、処理後の活性炭を“埋め立て条件”に近い環境でテストしてもPFASの溶出は検出限界以下だったと報告されています。Phys.org



なぜ「シンプルさ」が大きなニュースなのか

PFAS分解の研究はここ数年、世界中で盛んに行われています。高エネルギーのプラズマや超音波、光触媒、特殊な還元剤などを組み合わせる方法も提案されていますが、多くは専用装置が必要だったり、薬品コストや副生成物のリスクがネックになっていました。SpringerLink


今回の方法の強みは、とにかく“シンプル”であることです。

  1. 既存インフラとの親和性
    多くの浄水場はすでにGAC処理設備を持っています。PFASを吸着した後、そのGACをまとめてボールミルに投入すればよいので、プロセスの追加が比較的分かりやすい。

  2. 設備が専門的すぎない
    ボールミル自体は特別な実験機器ではなく、鉱山・セメント・電池材料などさまざまな産業で一般的に使われる装置です。スケールアップのイメージがしやすいのは大きな利点です。

  3. 薬品レスで副生成物の懸念が小さい
    薬品を加えないため、処理後の固体や排ガスに未知の副生成物が多量に含まれるリスクが低くなります。もちろん詳細な評価は今後必要ですが、「なるべく何も足さない」という方針は環境技術として魅力的です。

研究者らは、処理後の活性炭が埋め立て処分に耐えうることを示し、「PFASで汚れた活性炭を安全に“終わらせる”シンプルなルートになりうる」と述べています。Phys.org



SNSはどう反応したか? 希望・懐疑・怒りが交錯

このニュースが報じられると、X(旧Twitter)やReddit、LinkedInなどのSNSでは、さまざまな反応が飛び交いました。ここでは典型的な声をいくつかピックアップしてみます(いずれも趣旨を要約したものです)。


1. 「やっと“永遠”じゃなくなるかも!」という歓喜

「PFASのニュースっていつも暗い話ばかりだったけど、これは久々に希望が持てるやつだ」

「電気も薬品もほとんど要らないなら、地方の小さな浄水場でも導入できそう」

長年「どうやっても消えない」象徴だったPFASに対して、機械的な粉砕という意外なアプローチが決定打になるかもしれないという点に、多くのユーザーがワクワクを隠せない様子でした。


2. 「実証スケールまで見てからだ」とする慎重派

「ラボレベルで“完全分解”って何度も聞いてきた。産業規模で何トンも処理したときにどうなるかが勝負」

「エネルギー消費や装置の摩耗、メンテコストはちゃんと計算されているの?」

環境工学や水ビジネスに関わる専門職からは、冷静なツッコミも多数。粉砕にはそれなりのエネルギーが必要であり、鋼球やミルの摩耗による金属汚染など新たな課題も想定されます。


3. 「そもそもPFASを作り続けるのをやめるべき」という怒り

「いくら“壊せる”技術が出てきても、蛇口を締めなきゃ浴槽が溢れるだけ」

「汚染のツケを払うのはいつも納税者と住民。PFASメーカーが処理費用を負担する仕組みを作らないと」

PFASをめぐっては、欧州各地で大規模汚染が見つかり、巨額の浄化費用と健康被害が社会問題化しています。ザ・ガーディアン


その文脈で今回の技術を見る人々は、「新技術は歓迎だが、規制と企業責任の議論をぼかす道具にしてはならない」と警戒感も示しています。


4. 科学コミュニケーションの観点からの話題も

「“トライボエレクトロンでPFASを破壊”って、SF映画みたいなコピーが強すぎる」

「高校の化学教材に入れてほしい。化学結合の強さと分解の難しさを教える良い例になる」

難解になりがちな環境化学の話題を、ボールミルという身近な機械と組み合わせることで直感的に伝えられる点を評価する声もありました。



もちろん万能薬ではない:残された課題

期待が高まる一方で、この技術にはまだ多くの問いが残されています。

  1. スケールアップとエネルギー効率
    研究は比較的小さなサンプルで行われており、浄水場レベルの巨大なGAC量をどれだけの時間と電力で処理できるのかは未知数です。粉砕にかかるエネルギーがあまりに大きければ、ライフサイクル全体で見た環境負荷が増えてしまう可能性もあります。

  2. 他の汚染物質との相互作用
    実際の活性炭にはPFAS以外の有機物や金属なども吸着しています。それらがトライボエレクトロンによる反応に影響し、PFAS分解効率を下げたり、思わぬ副生成物を生んだりすることはないのか、詳細な評価が必要です。

  3. 処理後の材料の行き先
    実験ではPFASの溶出は検出されなかったものの、長期的な安定性や、再利用の可能性などはこれからのテーマです。ボールミル処理後の活性炭を別用途に再利用できれば、資源循環の観点からも価値が高まります。

  4. 規制との接続
    「PFASが完全に分解された」と見なすための基準を、規制当局がどう定めるかも重要です。微量分析技術の進歩により検出限界はどんどん低くなっており、どこまでを“安全”とするかは科学だけでなく社会の合意形成が求められます。



私たちの生活にとって何を意味するのか

もしこのボールミル法が実用化されれば、PFAS汚染対策のパズルのうち「終端処理」というピースが大きく前進します。

  • 飲料水処理施設は、PFASを吸着したGACをより安全に処理できるようになるかもしれない。

  • 軍事基地や空港周辺など、泡消火剤由来のPFAS汚染が深刻な地域で、土壌洗浄後の吸着材処理に活用できる可能性がある。

  • 巨額の処理コストが少しでも削減されれば、その分を予防的な対策や住民支援に回せるかもしれない。


とはいえ、私たちの身近な選択が重要である点は変わりません。PFASフリーの商品を選ぶ、PFAS規制を巡る政策議論に関心を持つ、といった行動は依然として不可欠です。PFASを「壊す」技術と、「使わない・流さない」仕組み作りは、車の両輪といえるでしょう。イェール大学の持続可能性



結びに —— 「永遠」ではなくしたいからこそ

PFAS問題は、便利さを追い求める人類の歴史が生んだ“負の遺産”の一つです。
だからこそ、その後始末も科学と技術、そして社会の意思決定の総力戦で乗り越えていくしかありません。


ステンレス球がゴロゴロと転がるボールミルの中で、「永遠」と信じられてきた炭素–フッ素結合が静かに切断されていく——。今回の研究は、そんな象徴的なイメージを私たちに与えてくれました。


このシンプルなアイデアが、世界中のPFAS汚染サイトや浄水場で実際に“現場の道具”として活躍する日が来るのか。
科学者だけでなく、市民や政策決定者も注視していくべきターニングポイントと言えそうです。



参考記事

研究者たちが活性炭上でPFASを簡単に分解する方法を発見
出典: https://phys.org/news/2025-11-simple-destroy-pfas-carbon.html

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