若年性大腸がんの謎を解く：10のバイオマーカーでリスクの予測を目指す

2025年06月27日 19:19

1990年以降、50歳未満で大腸がんを発症するケースが世界中で増え続けている。この"若年性大腸がん"の拡大に対し、南オーストラリア大学のマイケル・サミュエル教授を中心とした研究チームは、早期発見と再発予測の鍵を握る「10のバイオマーカー」を解明するため、新たな研究プロジェクトを立ち上げた。

若年性大腸がんとは、50歳未満で診断される大腸がんを指す。従来の大腸がんは高齢者に多かったが、現代では20〜40代の患者が目立ち始めている。豪州では、1990年生まれの人が1950年生まれの人よりも3倍高い発症リスクを持つという研究もある。

研究者たちは、食生活の変化、運動不足、肥満、腸内細菌の乱れ、抗生物質の多用、遺伝子変異など複合的な要因が関係していると考えている。特に、子ども時代の環境が大腸の細胞に影響を及ぼす可能性が注目されている。

若年性大腸がんの患者は、手術後の再発率が約50％とされており、年配の患者（約33％）よりも高い。再発を予測する手段が限られていることが課題であり、バイオマーカーの発見がその解決の糸口になると期待されている。

バイオマーカーとは、腫瘍や体内の異常を示す指標となる分子のこと。サミュエル教授らは、10種類の腫瘍関連分子を特定することで、

この研究は、Bowel Cancer AustraliaおよびCancer Australiaから総額57万ドルの助成を受けて実施されている。南オーストラリア大学を拠点に、SA Pathology、CALHN、Basil Hetzel Instituteなどの研究機関と連携して進められている。

研究が成功すれば、10のバイオマーカーは診断キットや再発予測ツールとして臨床現場で活用される予定である。これにより、若年層でもより精密で迅速な診断が可能となり、早期治療や再発防止につながる。

日本でも、大腸がん検診は通常40歳以上が対象とされているが、若年層の患者が増えている今、検診開始年齢の引き下げや、ライフスタイル改善への啓発が求められている。

豪州では"Never Too Young"という啓発キャンペーンが展開され、若年性がんのリスクや症状に関する教育が進められている。日本でも、4月の大腸がん啓発月間などを活用した情報発信が鍵となる。

この研究は単なる科学的な成果にとどまらず、若い命を守る社会的な意義を持つ。再発の恐怖に怯えることなく、安心して未来を描ける社会を目指す取り組みである。

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