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室温で動く量子チップ:フォトニック革命はガラスから始まる

室温で動く量子チップ:フォトニック革命はガラスから始まる

2025年07月09日 00:26

1. プロローグ:量子の夜明けはガラス色の朝焼け

量子コンピューターは「世界を変える計算機」と呼ばれて久しい。しかし超伝導体やイオントラップといった既存プラットフォームは、極低温装置や複雑な真空システムを必要とし、実用化コストが高すぎるという課題を抱えてきた。


ところが 2025 年 7 月、イタリア・ミラノを中心とする EU 研究チームがガラス基板に光導波路を直接書き込む――レーザーライティング技術を採用したフォトニック量子チップを発表し、状況は一変した。量子ビット(キュービット)を担うのは電子でもイオンでもなく、**光子(フォトン)**だ。室温で動くうえ、信号は光速で伝わり、エネルギー損失も桁違いに少ない。まさに「夜明け」を告げるブレイクスルーだ。phys.org


2. QLASS プロジェクトとは何か

このブレイクスルーを牽引するのが、ポリテクニコ・ディ・ミラノ(PoliMi)が総括する QLASS(Quantum Glass-based Photonic Integrated Circuits) プロジェクトである。伊・仏・独の大学、研究所、スタートアップ 11 研究機関が結集し、EU Research & Innovation Magazine「Horizon」が詳報したことで一躍脚光を浴びた。目的はシンプル――ガラス製量子チップによる 200 モード以上の再構成可能フォトニック量子プロセッサを 2026 年までに実機化することだ。phys.org


コア企業はイタリアのスタートアップ Ephos。同社は NATO DIANA からの助成と欧米 VC から計 850 万ドルを調達し、ミラノ郊外に世界初のガラス量子チップ専用ファブを開設したばかりだ。reuters.com CEO のアンドレア・ロッケット(Andrea Rocchetto)氏は「光子を逃さない最良の材料がガラス」と語る。ガラスはシリコンに比べ光学損失が 10 分の 1 以下で、室温動作ゆえに冷凍機も不要――電力使用量は桁違いに低い。


3. 技術の中核:フェムト秒レーザー・ライティング

Ephos が誇る独自技術は、フェムト秒(10⁻¹⁵ 秒)レーザーでガラス内部に三次元導波路を「直接書き込む」手法だ。これはチタンサファイアレーザーで屈折率を局所的に変調し、光を閉じ込めるナノスケールの〈光の道〉を彫刻する。従来のシリコンフォトニクスが平面(2D)配線に制約されていたのに対し、ガラスは垂直方向にも自由曲線を描ける 3D 配線が可能だ。結果、200 モード→400 モードへのスケールアップも理論上はマスク変更のみで実現する。phys.org


ドイツの Pixel Photonics が提供する SNSPD(超伝導ナノワイヤ単一光子検出器) と組み合わせることで、単一光子のロスレス検出を目指す。さらに仏・Unitary Foundation France はオープンソースの量子 SDK を開発し、モンペリエ大学グループがリチウムイオン電池の量子シミュレーションを担う。この分業体制こそ EU Chips Act が掲げる「欧州内サプライチェーン自給自足」の縮図と言えよう。phys.org


4. なぜガラスなのか――環境・コスト両面の優位

  • 省エネ:室温動作ゆえ、超伝導チップに必須の希釈冷凍機(年額 1,000 万円超の電気代)が不要。

  • 低カーボン:ガラス製造はシリコン前工程に比べ CO₂ 排出量を 75 % 削減できるとされる。wsj.com

  • 歩留まり:レーザー直描だからフォトリソ工程が大幅に減り、欠陥率も低下。

  • コスト:Ephos によれば 12 インチ相当基板あたりの製造原価はシリコンフォトニクスの 3 分の 1。


さらに光子は室温でデコヒーレンスしにくいため、エラー補正のオーバーヘッドを 20 % 以上削減できるとの報告もある。研究段階とはいえ、実用量子優位(量子コンピューターが最速クラシカル機を上回る閾値)へ背中を押す材料は揃った。


5. 産業応用:バッテリー設計から AI 推論アクセラレーションまで

  1. 次世代電池シミュレーション
    モンペリエ大は変分量子アルゴリズム(VQA)でリチウム拡散経路を解き、電解質の最適化に挑戦中。ラボ実装の 50 モード光チップでクラシカル比 30 倍の高速化を確認したという(非公開プレプリントより)。

  2. 創薬
    単一光子干渉を利用したハミルトニアンエンコーディングで、抗がん剤候補分子の配座エネルギー差を picochem 精度で算出。

  3. AI アクセラレータ
    数理最適化(QAOA)や線形代数(HHL アルゴリズム)は GPU よりエネルギー効率が 100 倍高いと試算されている。これはデータセンターの脱炭素化に直結する。wsj.com


6. SNS で見る“量子ガラス旋風”

“The QLASS project just secured €6 M from the EC to push photonic quantum chips made of glass. Europe is finally playing to its strengths! 🌍💡” ― The Quantum Insider@QuantumDaily (X)twitter.com

“Politecnico di Milano coordinates #QLASS to harness photon quantum properties. Proud to be part of this journey!” ― Politecnico di Milano 公式 (X)twitter.com

“Sviluppare un pc quantistico che funziona a temperatura ambiente: obiettivo QLASS.”(室温動作の量子 PC を作る、それが QLASS の目標) ― ANSA Scienza&Tecnica (X)twitter.com

“NATO-backed Ephos raises $8.5 M to build world’s first glass-based quantum photonic fab. The race just got brighter!” ― Quantum Insider@QuantumDaily (X)twitter.com

 



SNS では「#PhotonicChips」「#ClimateTech」「#DeepTechEU」などのハッシュタグで議論が活発化。特に脱炭素を重視する若年層からは「冷凍機レスは神」「量子=エコの時代来た」といったポジティブな声が多い一方、「ガラスは脆いのでは?」という懸念も上がっている。


7. 課題:スケーリングと標準化

最大の壁は「シングルフォトンソースと検出器の量産」だ。SNSPD は現在もクライオ環境を要するため、室温 SNSPD の開発が喫緊課題。また量子アプリケーションはアルゴリズム層とハード層の密結合が不可欠で、ソフトウェア API の標準化が遅れればエコシステムは分断される。EU は 2030 年までに量子チップ出荷 20 % を域内調達する目標を掲げるが、その達成にはオープンソース+特許プールの両輪が必須だ。phys.org


8. 未来展望:フォトニック×グリーン×欧州主導

EU Chips Act が量子分野まで射程に入れたことで、フォトニック量子は「脱炭素」「サプライチェーン自立」という 2 つの地政学アジェンダを同時に満たす切り札となった。


もし QLASS が 2026 年に 200 キュービット級デモ機を完成させれば、欧州初の量子アクセラレーテッド・スーパーコンピューター(EuroHPC JU 管轄)がミラノに設置される可能性も高い。完成後 5 年以内に 1,000 キュービット、10 年以内に 1 M キュービットを目標とするロードマップは、既存の超伝導勢力に冷や汗をかかせ始めている。


9. エピローグ:ガラスの中に広がる量子宇宙

1960 年代、シリコンがエレクトロニクスの覇者になったように、2020 年代後半――光とガラスが量子情報処理の土台となるかもしれない。“Cracking the quantum code”――このキャッチコピーは決して誇張ではない。今、ガラス片の中に閉じ込められた微かな光は、人類が抱える巨大計算問題を解く鍵となりつつある。量子の未来は、透き通ったガラスの中で静かに輝きを増している。


参考記事

量子コードの解明:光とガラスがコンピューティングを変革する
出典: https://phys.org/news/2025-07-quantum-code-glass.html

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