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バクテリアがつくる“脱石油”プラスチック:PETを上回る可能性を示したPDCAとは

バクテリアがつくる“脱石油”プラスチック:PETを上回る可能性を示したPDCAとは

2025年09月06日 00:03

「強いのに、ちゃんと分解する」――プラスチックに求められ続けてきた相反する要件に、日本発の一手が入った。神戸大学のバイオエンジニアリングチームが生分解性プラスチック前駆体「PDCA(2,5-pyridinedicarboxylic acid)」を大腸菌で高濃度に生産し、PDCAを組み込んだ材料の物性がPETに匹敵あるいは上回る可能性を示したのだ。速報は2025年9月4日にPhys.orgが配信、原著論文は Metabolic Engineering にオンライン掲載された(8月25日)。 Phys.orgPubMed


なぜ“PDCA”なのか――PETの壁と窒素を抱く骨格

PET(ポリエチレンテレフタレート)は軽く強く、透明で成形もしやすい。「優等生」であるがゆえに、回収・分解の遅れやマイクロプラ問題まで抱え込んだ。代替候補としてPLAやPHAなどがあるものの、強度・耐熱性・加工性の総合得点でPETを超えるのは簡単ではない。


そこで脚光を浴びるのがピリジン環をもつPDCAだ。骨格に窒素(N)を含むことで分子間相互作用の設計余地が広がり、高性能ポリマーの構成単位として魅力的だが、バイオ生産の効率がネックだった。神戸大チームはこのボトルネックに、「細胞の窒素代謝を動員する」という代謝工学上の発想転換で挑んだ。 Phys.org神戸大学


何が新しいのか――“副生成物なし”のクリーン合成と7倍超の濃度

論文によれば、研究チームはp-アミノ安息香酸(PABA)経路を足場に、外来酵素AhdAや改良型PobAを段階的に組み合わせ、グルコース→PABA→PDCAの直結生合成を確立した。試験管では72時間で1.84 g/L、バイオリアクターでは144時間で10.6 g/Lを達成。これは従来報告より7倍以上の濃度に相当し、スケール感のある発酵生産の目安を初めて示したと言える。さらに重要なのは、望まれない副生成物を出さない経路設計で、下流精製の負担軽減が見込めることだ。 PubMed神戸大学


研究グループは「窒素を取り込む代謝反応を利用し、副生成物なしで目的物を合成できることを示した」(神戸大学リリースより) 神戸大学


乗り越えた“ボス戦”――H₂O₂による酵素失活

ただし、道のりは順風ではない。導入酵素の一つが反応の副過程で過酸化水素(H₂O₂)を生じ、生成したH₂O₂が酵素を攻撃して失活するという“自己崩壊”ボトルネックが立ちはだかった。研究チームは培養条件を練り、H₂O₂スカベンジャーを添加することで解決。工場スケールでは添加剤のコストや物流が課題となるが、プロセス制御や触媒改良で代替的に解く余地もある。 神戸大学


“PET超え”の意味――材料設計の観点から

Phys.orgは、「PDCAを組み込んだ材料はPETに匹敵または上回る物性」を強調する。ここでのポイントは“PDCA=完成品のプラスチック”ではなく“高性能ポリマーを構成するビルディングブロック”だということ。共重合比や添加剤設計次第で剛性・耐熱・耐衝撃の最適点が動くため、PETボトルをそのまま置換するのではなく、フィルム・繊維・エンジニアリングプラなど用途別に勝ち筋を探すステージに入った、と捉えるべきだ。 Phys.org


実装までの“次のハードル”

  1. 原料・発酵のコスト:10.6 g/Lは力強いが、ガロン当たりいくらに落ちるかが勝負。糖資源の持続可能性や副流原料(セルロース糖化液など)の適用も鍵。 PubMed

  2. 下流精製(DSP):副生成物が少ない利点を活かし、抽出・結晶化の省エネ化を追求できる。

  3. 重合・成形の互換性:既存ライン(溶融、延伸、射出、繊維紡糸)へ最小改修で載るか。

  4. 分解シナリオの規格化:どの条件で、どれくらいの時間で分解するか(堆肥化、土壌、海水など)を国際規格に合わせて検証。

  5. LCA/PCF:**ライフサイクル評価(LCA)と製品カーボンフットプリント(PCF)**で、石油由来PETに対するCO₂削減幅を定量化。規制・インセンティブ設計にも直結する。


神戸大学は**「バイオリアクターで十分量を得られることを示し、実用化への道筋が見えた」と述べる。産学連携で触媒耐性の高い酵素改良や培養制御**を進めれば、スカベンジャー依存の度合いは下げられるだろう。 神戸大学


既存バイオプラとの立ち位置

  • PLA/PHA:生分解性では先行するが、耐熱・衝撃の面で用途が限られることも多い。

  • PDCA系:窒素含有の芳香族骨格を活用し、高剛性や耐熱性に強みを出せる設計余地がある。神戸大は2024年にも**“高品質グリーンプラスチックの微生物工場”を発表しており、連続プロセス化や素材設計の選択肢**を積み上げている。 神戸大学


データで読むブレークスルー

  • 1.84 g/L(72h, 試験管)→10.6 g/L(144h, バイオリアクター):時間・スケールに比例して堅実に伸びる。**発酵生産の“見込み線”**として有望。 PubMed

  • “7倍超”:従来報告比での濃度改善は、下流コストの逓減と資本効率に直結。 神戸大学

  • “副生成物なし”志向:分離・精製の省エネルギー化に効く。 Phys.org


SNSの反応を拾い読み

海外掲示板Redditの科学板では、「これを3Dプリンタにかけてみたい」という技術者肌の期待と、「肝は生産速度と産業スケール。まだブレークスルーと呼べるかは慎重に」という実務目線のコメントが混在した。議論は量産性・LCA・用途開拓に集中しており、“強さと分解性の両立”ゆえに包装材→繊維→エンプラと段階適用を探るべきという見方が多い。 Reddit


一方、ニュース配信ではScienceDailyや**EurekAlert!が相次いで取り上げ、「副生成物を出さない経路」「記録的生産レベル」**をキーワードとして拡散。一般メディアでも“PETより強い生分解プラ”の見出しが並び、期待先行と冷静な実装論のせめぎ合いが可視化された。 ScienceDailyEurekAlert!menafn.comAsianet Newsable


Redditの短評
「Sickos(=好き者)なら3Dプリンタに通すはず」
「大事なのは産業スケールの到達速度」 Reddit


どこへ向かうのか――実装ロードマップ

  1. 原料多様化:糖蜜・廃糖液・リグノセルロース糖化液への適用でフード・フューエル競合を回避。

  2. 酵素耐性化:H₂O₂生成を抑える酵素変異設計や共発現で添加剤依存を低減。 神戸大学

  3. 重合ルート確立:共重合体の設計地図(ガラス転移温度、結晶化速度、延伸性)を用途別に策定。

  4. 規制・規格:堆肥化(ISO 17088/EN 13432 など)や海水分解の第三者試験を早期に実施。

  5. 市場導入:まずは高機能フィルム・耐熱繊維などPETの弱点を突けるニッチから攻め、スケールに伴ってボトル等の汎用用途に横展開。


結論――“強く、そして還る”を現実に

今回の神戸大学の成果は、「PET級の強さ」と「生分解性」の同居に現実味を与えた。代謝工学で窒素を抱く骨格をクリーンに組み上げるという新機軸は、ポリマー設計の自由度を一段押し上げる。もちろん、生産性・DSP・重合実装・分解規格という陸続きの課題は残る。しかし10.6 g/Lという数字は、研究室の化学から工業の化学へ橋を架ける、頼もしい里程標である。 PubMed


参考記事

遺伝子操作された大腸菌が、広く使用されているPETを上回る性能を持つ生分解性プラスチックを生産
出典: https://phys.org/news/2025-09-coli-biodegradable-plastic-outperforms-widely.html

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