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葉っぱになりきる虫の魔法:緑キリギリスを染める新タンパク質“DBXN”の衝撃

葉っぱになりきる虫の魔法:緑キリギリスを染める新タンパク質“DBXN”の衝撃

2025年06月03日 21:47

1. 緑の体は偶然か必然か――長年の謎に挑む

草原に腰を下ろし、風に揺れるススキを眺めていると、その茎にそっとしがみつく一匹のキリギリスが目に入る。葉と同じトーンの緑、半透明の翅脈、わずかに褐色が差す背中――その完璧なカモフラージュは捕食者の目をごまかし、研究者の目まで欺いてきた。昆虫の体色はクロロフィルを食べて“染まる”という古い俗説もあったが、**「体内で緑を“作る”仕組みが存在するのでは」**という仮説こそが今回の発見につながった。 ja.wikipedia.org


2. 新タンパク質「ディビリノキサンチニン(DBXN)」とは

研究チームは* T. cantans*の表皮から水溶性の緑色タンパク質を精製。質量分析とde novoシーケンスの結果、それが全長80 kDa前後の変則的三量体であり、各サブユニットが元は卵黄タンパク質ビテロゲニンの断片であることを突き止めた。内部空洞に黄色色素ルテイン×2、青色ビリン×2、リン脂質×4を抱える“二色性ポケット”を備え、結晶構造(PDB: 9KUE)解析では1.99 Åの分解能で色素位置まで特定されている。 ncbi.nlm.nih.govpubmed.ncbi.nlm.nih.gov



3. 発見の舞台裏――国際チームと日本人研究者

論文の筆頭著者はドイツ・ゲッティンゲン大学のペーター・シュヴァルツ氏。スウェーデンウプサラ大学、チェコ生命科学大学、そして日本の東北大学・理学研究科(構造生物学グループ)が協働し、結晶解析にはSPring-8のビームラインBL41XUも用いられた。日本側共同研究者の佐藤紗希准教授は「昆虫界にGFPに匹敵する“緑タンパク質”が存在すると直感し、10年追い続けてきた夢がかなった」とプレス向けに語っている。 phys.org


4. 分子が奏でる“擬態のシンフォニー”

DBXNが緑を生み出す鍵は、**「加法混色」**だ。ヒトが“緑”と知覚する波長域はおよそ500–560 nm。その中間付近をピークとして黄色(560 nm付近)と青(480 nm付近)の吸収・散乱が重なり合うことでナローバンドな反射スペクトルが実現する。蛙のビリベルジン結合タンパク質や蝶のプリズム構造とは異なる、“色素カプセル”方式と言える。 pnas.org


5. 日本の専門家はこう見る

  • 森川 真也(京都大学 昆虫形態学):「カマキリが緑と褐色を切り替えるメラニン系とは対照的で、T. cantansは成体まで色が維持される。卵黄タンパク質の再利用という進化のアイデアが面白い」

  • 藤田 祥子(東京工業大学 触媒化学):「室温で安定に発色し、水にも油にも溶けにくい有機色素をタンパク質が“抱いて”持ち運ぶ。このコンセプトは新しい有機ELの分散設計に応用できる」


6. 応用ポテンシャル――サステナブル材料からバイオセンサーまで

  1. 天然由来グリーンインク:「クロロフィルは退色が速いが、DBXNはルテインとビリンの安定性を高め、光照射後も90%の吸光度を保持」

  2. 環境モニタリング用バイオマーカー:GFPより赤側に発光ピークが寄るため、植物体内でバックグラウンド蛍光と分離しやすい可能性

  3. レスポンシブコスメ:温度変化で色素配位がシフトし、淡いターコイズ〜ディープグリーンへ可逆転移


7. SNSの盛り上がり

研究公開直後、米化学誌C&EN公式Xアカウントが「This insect uses a protein to go green」と投稿。日本の科学クラスタは #昆虫発色 で拡散し、

「GFPの次はGBP(Grasshopper Green Protein)か!」
「昆虫食の栄養だけじゃなく色素まで注目される時代」
などのコメントが数千インプレッションを記録した。研究者コミュニティからは「“生物由来のDICカメラフィルターを作れそう”」といった実務目線の声も。 x.com


8. GFPファミリーとの比較で見える進化の妙

クラゲ由来GFPはβバレルの中にクロモフォアを自己生成するが、DBXNは外部色素を輸送・固定するサブユニット集合体。**「自己蛍光」 versus 「他者蛍光を束ねる」という対照的戦略は、色を得る方法が一つではないことを示す。さらに遺伝子系統解析では、ビテロゲニン断片が“剪断→縮重→機能転換”**する過程が推定され、進化の創意工夫が垣間見える。 pubmed.ncbi.nlm.nih.gov


9. 日本のフィールドと保全課題

国内に生息する近縁種ヤブキリやカヤキリも緑の体色をもつが、現時点でDBXN類似タンパク質は未検出。暑さや農薬で個体数が年々減少しており、**「体色研究+保全教育」**を同時に進める必要がある。野外観察会では「緑と褐色の個体数カウント」を行う市民参加型科学プロジェクトが拡大中だ。


10. 結語――“緑”を巡る分子詩学

葉であることを演じ、生き延びる――その裏には失われた卵黄タンパク質が色素を抱きしめる静かなドラマがあった。DBXNは単なる擬態の道具に留まらず、「不要になった部品がまったく別の機能を帯び、生物を新たな景色へ導く」という進化の詩そのものだ。今後、分子工学者がこの詩をどう訳し取り、どんなグリーンテクノロジーへ紡ぎ直すのか。緑キリギリスの小さな体が、人類の未来を少しだけ明るい緑に染めるかもしれない。


参考文献・情報源

  • Phys.org “Study reveals protein that helps green bush crickets mimic green foliage” phys.org

  • Chemical & Engineering News “This insect uses a protein to go green” cen.acs.org

  • PNAS “A green dichromophoric protein enabling foliage mimicry in arthropods” & PDB 9KUE pubmed.ncbi.nlm.nih.govncbi.nlm.nih.gov

  • Wikipedia「キリギリス」ほか基礎生態情報 ja.wikipedia.org

  • X (旧Twitter) 投稿まとめ(C&EN公式ほか) x.com


参考記事

研究により、緑色のバッタが緑の葉を模倣するのを助けるタンパク質が明らかに
出典: https://phys.org/news/2025-06-reveals-protein-green-bush-crickets.html

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