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道路のCO₂を減らす最短ルート? 雪国の敵・ひび割れを抑える新手:藻オイルがアスファルトを“しなやか”に

道路のCO₂を減らす最短ルート? 雪国の敵・ひび割れを抑える新手:藻オイルがアスファルトを“しなやか”に

2025年12月17日 00:12

冬の道路が壊れる「いつもの理由」に、意外な答えが来た

雪国や寒暖差の激しい地域に住んでいると、春先の道路はだいたい同じ顔をしている。ひび割れが網目状に走り、そこに水が入り、凍って膨らみ、溶けて隙間が残り、最後はポットホールへ——。車は跳ね、歩行者は危なく、自治体の補修費は膨らむ。


この“冬の負債”を少しでも軽くするために、研究者が持ち込んだ材料がある。道路に混ぜるのは、タイヤでもプラスチックでもなく……「藻(微細藻類)」だ。Phys.org(ACS提供記事)によれば、藻由来の成分で作ったアスファルト用バインダー(結合材)が、氷点下でのひび割れを抑え、耐久性を上げる可能性が示されたという。 Phys.org


アスファルトの“弱点”は、石油由来の「のり」が硬くなること

アスファルト舗装は、砂や砕石などの骨材を、ビチューメン(原油由来の粘着質な物質)がまとめることで形を保っている。暑い日は伸び、寒い日は縮む——この伸縮に追随できる“しなやかさ”が命だ。ところが急激に冷えると、バインダーが脆くなり、割れやすくなる。ひび割れの入口ができれば、水が入り、凍結・融解の反復で一気に傷が育つ。 Phys.org


今回の研究は、この「寒さで硬くなる問題」に対して、藻オイルを原料に“ゴムっぽい”性質をもつ持続可能なバインダーを作り、低温域での性能を狙っている。 Phys.org


4種類の藻オイルを“計算で目利き”し、最有望株を選ぶ

面白いのは、いきなり実験で殴り合わない点だ。研究チームは4種の藻由来オイルについて、アスファルトの固形成分と「ちゃんと混ざるか」「凍る温度帯で機能を保てるか」を計算モデルで評価し、その上で試験につなげた。 Phys.org


結果として有望視されたのが、淡水性の緑色微細藻類 Haematococcus pluvialis 由来のオイル。これが、交通荷重を模した応力下での永久変形(わだち掘れ方向のダメージ)への抵抗や、湿気で傷む現象への抵抗で良い傾向を示したという。 Phys.org


“凍結×交通”の模擬試験で、変形回復が最大70%改善

ラボで「交通を踏む」「凍らせて戻す」を繰り返すようなデモ試験では、H. pluvialis を使った藻アスファルトが、従来の原油系バインダーの舗装に比べて最大70%の変形回復改善を示したとされる。さらに氷点下では、石油系バインダーよりもひび割れが減った、というのが要点だ。 Phys.org


ここで重要なのは、「ただ硬くする」のではなく、「寒いほど必要になる柔軟性と回復性」を上げにいっていること。寒冷地の舗装は、柔らかすぎると夏にわだちが出るし、硬すぎると冬に割れる。藻由来バインダーは、その綱渡りに別の選択肢を提供する。


CO₂削減インパクト:1%置換で4.5%削減、22%で“カーボンニュートラル”の可能性

性能だけでなく、環境面の数字も提示されている。研究チームの推計では、石油系バインダーの1%を藻由来バインダーに置き換えるだけで、アスファルトの正味カーボン排出が4.5%減る見込みがあるという。さらに約22%を藻由来にできれば、理論上はカーボンニュートラルに近づける可能性がある、と述べられている。 Phys.org


もちろん、ここは最も議論が起きやすいポイントでもある。カーボンニュートラルは「育てる藻の方法」「オイル抽出・改質に使うエネルギー」「輸送」「舗装寿命が本当に延びるか」など、ライフサイクル全体で評価して初めて固まる。数字は“可能性の目安”として読みたい。 American Chemical Society


実装のハードル:スケール、コスト、規格、そして“暑さ側”の評価

研究側は「高性能でコスト効率の良い、持続可能な舗装インフラ」への道を描く。 Phys.org


一方で、実装には論点がいくつもある。

  • 原料スケール:道路は量が桁違い。藻オイルをどの供給網で、どの価格で、安定的に出せるか。

  • 製造・混合プロセス:既存のアスファルトプラントで扱える粘度・温度レンジなのか、改造が必要なのか。

  • 長期耐久:紫外線、酸化、繰り返し荷重、融雪剤、油汚れなどの現実条件で、性能が何年保てるか。

  • 暑い季節の性能:冬に強くても、夏のわだち掘れ・流動抵抗が落ちないか。

  • 規格・認証:公共工事で使うには、規格適合と発注者側の採用判断が必要。


今回の成果は「氷点下性能の手応え」を示した段階で、次に欲しいのはフィールド(実路)でのデータだ。


SNSの反応:期待の声と、“数字の裏側”を問う視線

この話題は研究室の中だけに留まっていない。研究を率いるElham Fini氏(Ellie Fini名義)のLinkedIn投稿では、論文がACS Sustainable Chemistry & Engineeringのカバーに掲載されたこと、さらに“分子レベルの指標(polarizability)でバイオオイルの相性を予測する”アプローチを強調し、反応(リアクション)やコメントが集まっている。 LinkedIn


コメント欄には、たとえば「持続可能材料として印象的」「インフラに科学を重ねるのは、よりグリーンな未来につながる」といった称賛が見られる。 LinkedIn


一方で、SNSでこの種の“グリーン素材×インフラ”が話題になると、ほぼ必ず出る論点もある。

  • 「それ、量産できる?」(供給量と価格)

  • 「本当にCO₂は減る?」(LCA前提へのツッコミ)

  • 「別の環境負荷は?」(土地・水・化学処理、産業化の副作用)

  • 「耐久は何年?」(舗装は“長持ちしてナンボ”)


称賛と検証要求がセットで出るのは、むしろ健全だ。道路という社会インフラに使う以上、“面白い素材”だけでは採用されない。性能・コスト・施工性・安全性・環境影響を、現場の言葉で説明できるところまで落とし込めるかが勝負になる。


それでも、藻アスファルトが示す「次の常識」

今回の研究の価値は、「藻を混ぜたらエコ」ではなく、寒冷地の故障モード(低温ひび割れ)に対して、材料設計で正面から殴り返せるところにある。しかも、材料探索に計算モデルを入れ、候補を絞り、実験で確かめ、排出削減の仮説まで提示した。 Phys.org


冬に壊れ、春に直し、また冬に壊れる——そのループを少しでも緩められるなら、ドライバーの安全も、自治体の予算も、結果的にCO₂も動く。藻が道路を救う日が来るかどうかは、次のフィールドデータが握っている。


(参考:DOI 10.1021/acssuschemeng.5c03860/資金は米国エネルギー省支援の記載あり)



参考記事

藻類を基にしたアスファルト結合材が寒冷地の道路を強化
出典: https://phys.org/news/2025-12-algae-based-asphalt-binder-roads.html

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